コロナ禍を経て一度は定着したテレワーク。5類移行を背景に、出社回帰の動きが鮮明となっており、日本生産性本部が8月に発表した、働く人のテレワーク実施率は15.5%とコロナ禍以降で最低。最も高かった初回調査(2020年5月、31.5%)の半分以下の水準だ。
「全面出社」に移行したいと考える企業の割合が増えていることを示す調査もある。とはいえ、職場にDXが求められる昨今、一度手にしたテレワークのノウハウを完全に手放すことは現実的ではない。多くの企業が、テレワークと出社を組み合わせた「ハイブリッドワーク」を選択している。
そんなハイブリッドワークにも難点はあり、「誰が出社しているか分からない」「出社する人が増えて社員の顔と名前が一致しない」――など、課題も多い。
旅行大手の日本旅行は、こうした課題感を抱きつつも、社員にとってメリットがあるハイブリッドワークを推進しようと、さまざまな業務改革を進めている。従来はホワイトボードで社員の在席・勤務状況を管理していたが、代わりにITツールを導入することで、在席管理にとどまらない副次的な効果も生まれてきたという。デジタル化で見えてきた、同社のハイブリッドワーク成功の兆しとは――。
「同じフロアで働いているのに、社員同士が顔と名前も知らないという状況は正しいのだろうか」
日本旅行DX推進本部デジタルイノベーション推進部と総務人事部を兼ねる三宅佳広さんは、ハイブリッドワークを社内に浸透させていく過程で、そんな疑問を抱いてきたという。
同社の東京本社では日々、社員の3分の1がテレワーク、3分の2がオフィス出社という割合だ。オフィスの席は固定しない「フリーアドレス」となっている。
同社ではこれまで、社員がホワイトボードに名前とステータス、帰社時間を記載することで在席状況を管理してきた。とはいえ、テレワークやフリーアドレスだと、ホワイトボードでは誰がどこにいるのか分かりづらい。
在席管理のデジタル化を検討するきっかけとなったのは、22年5月の大型連休のこと。もともと約200人の社員がいた東京の営業本部に、支店などが集約される形となり、約350人に増加することになった。
このとき持ち上がったのが在席管理の問題だった。人数が増えれば自然、名前や顔を知らない社員も増えてくる。
こうした課題を解決し「会社組織をよりよくしたい」(三宅さん)と考え、同社はホワイトボードをやめ、デジタル座席管理ツール「せきなび」を導入した。
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