10月に改訂された労働者の最低賃金は全国平均で1002円となり、初めて1000円を超えました。ただし他のOECD加盟国と比べると依然として低い水準であり、さらなる賃金アップが必須なのは自明でしょう。岸田文雄首相も2030年の半ばまでには、最低賃金の全国平均を1500円にすると宣言しています。
一方で「最低賃金をアップさせると倒産や人員の厳選などにより、雇用の機会が失われ失業者が増える」という意見もあります。果たしてそれは本当なのでしょうか?
「最低賃金を上げると倒産や人員の厳選などにより失業者が増える」という考え方は、経済学の世界では長くあったようです。しかし2021年にノーベル経済学賞を受賞したDavid Card氏のように「最低賃金の上昇が10代の労働者の雇用率を引き下げている証左は認められない」との見解を示す経済学者もいます。
また、最低賃金の上昇率が著しい米国や韓国の失業率は、8月時点で米国が3.8%、韓国が2.4%と、日本の2.7%と比べて高すぎるわけではありません。失業率の集計方法は国によっても異なるので、この結果だけを見て判断はできないものの、筆者は3つの理由から、最低賃金を上げても失業率は急激には悪化しないと考えています。
1つ目は、日本における最低賃金はパート社員など非正規で働く人を対象としたもので、正社員の給与と差があるからです。最低賃金が最も高い東京都でも、時給の最低賃金を月額に換算すると17万8080円です。23年の大卒初任給の21万8324円と比較すると低い額にとどまります。中途採用の給与も大卒初任給以上に設定する企業が多いですから、今後さらなる最低賃金アップがあったとして採用枠を縮小することは考えにくいです。
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