相手のWillにたどり着くためには、まずは本人が本人を知る作業、つまり「メタ認知」をしてもらうことが大切です。過去にどんなことをやってきたか、自分自身で振り返って考えることで、自分を理解する作業をしてもらいます。それによって、お互いにその人のWillが認識できるようになるでしょう。
しかし、どうコミュニケーションしてもWillにたどり着けない……といった場合は、スモールサクセスを通して、まずCan(できること)の幅を広げられるようサポートしましょう。小さなチャレンジを与え、内容も本人に決めてもらうことで「自分の力でできた」という成功体験を作ります。その積み重ねによって「自分はこういうことがやりたかったんだ」「自分のやりたいことができた」と認識できるようになります。これが「Will」のメタ認知につながります。
このような作業を通じて、「Willをメタ認知」してもらうために必要なのは、「コミュニケーションの量」です。部下が「現状維持でいい」と思っているということは、現在は快適な状態(コンフォートゾーン)にいるということです。そこに何かしらの変化を与えるということは、不快適なところへ連れて行かなければならないですが、それをわざわざ志望する人はなかなかいません。
変化には不安が伴うものです。自信が不十分だったり、自分の能力を低く見積もったり、可能性を信じられなかったり、といったメンバーのネガティブな心理状態を変えるためには、やはりコミュニケーションの量を増やすことが重要です。
自分がどうなりたいのか、どうなることが自分の人生を豊かにするのか。そういったアプローチにどれだけ時間をかけるのかが一番大事です。
そうしたコミュニケーションが積み重なった上で初めて「メンバー本人は、昇進をどう捉えているのか」という話ができます。昇進には「一人ではできなかったことが、組織を巻き込みながらできるようになる」という側面があります。部下が「自分のWillを実現するためには、昇進が必要だ」という考え方ができるようになれば、おのずと「昇進したい」と思えるようになるのではないでしょうか。
やりたいことを把握したら、そのメンバーを「(一方的に)導こう」と考えるのではなく「一緒にやろう」の姿勢で伴走することが大切です。応援してくれる人の存在は、成長に大きく寄与するでしょう。
かつては昇進すること自体を目的とする人も多くいましたが、現代においてはキャリアの選択肢の一つにすぎません。マネジャーは「メンバーに役職というラベルを与え、昇進させる」というよりは「役割に適した人間を配置する」ことが求められます。
昇進させることが目的ではなく、部下の思いをしっかりと理解しつつより良い組織をどう作るかを考えることが、私たちマネジャーの責務ではないでしょうか。
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