「あ、その程度でいいんだ」「責任ないもんね」 上司のちくちく言葉、どこからがパワハラ?(2/2 ページ)

» 2023年11月15日 08時00分 公開
[鈴木麻耶ITmedia]
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使われがちなチクチク言葉3選 問題はどこ?

 ここからは、職場で発せられがちなチクチク言葉を3つ紹介します。何が問題か、どう言い換えるべきか、考えながら読んでみてください。

「責任なくていいよね」

 誰かがやってくれるという無責任さに対して出てきてしまいがちな言葉です。本来であれば、そういった雰囲気を打破し、部下が能力を発揮できる環境を作ることが上司の役割です。明らかにアプローチの方法が間違っており、またその言葉を受けた部下も明確な業務指示ではないため、人格を否定されたような気分になるでしょう。

 例えば「●●案件のチームとしての対応を再考してほしい」「▲▲については11月終了予定だったが、進捗はどうなっているのか」など、対象や目的を具体化して業務命令として成り立つ形を整えてください。

「負荷の少ない仕事で毎日褒められていいよね」

 負荷の少ない仕事は価値がない仕事ではありません。また、業務負荷は本人の経験能力に左右されるもので、誰にどの業務をアサインするかというマネジメント側の責任も大きいです。

 いずれにしても、業務指示としては成り立っていません。考え方を切り替え、どれ位の業務負荷及び量が適正なのかを、俯瞰(ふかん)で見て指示を出す状態に自律することが必要です。

「どうやってクライアント丸め込んだの」

 これに至っては、関係構築できた本人の努力の過程を見ず、その結果を評価していません。さらに「別の何か」を使って関係性を築いたのではないかといった臆測も透けて見えます。品性に欠ける言葉で、人格を否定されたと感じる方もいるでしょう。

 取り組んだ結果を上司として真摯に受け止め、称賛する姿勢こそが、良好な職場環境を作ります。内省し、一歩止まってみることが必要です。

ハラスメントは「労働」と離れたところで起きている

 上司の役割とは、部下に適切な業務命令をし、チームの職場環境を整え、組織としての目標を達成することです。ここに顧みた場合、上記の言動は、最終的な目標達成とはかけ離れたものです。自分の職責に値する正しい業務命令を心掛けてください。

 そして部下の職務とは「業務命令に従うこと」なのですが、そもそも労働契約の内容は労働にかかわる能力の提供です。誰も人格やプライベートを差し出す契約はしていないのです。ハラスメント問題は、この「契約していない所」に職場という場面を利用してガサツに手を出してしまうことが根本原因にあります。

 実際今回ご紹介したチクチクした言動だけで「パワハラだ」と訴える人は多くはないでしょう。しかし、確実にモチベーションは下がり、働きやすい環境からは離れていきます。自身の職責は何なのか、自身が労働契約で提供するものは何なのかと、いま一度立ち返り、エンゲージメントの高い環境を作っていくことが大切です。

著者紹介: 鈴木麻耶 (すずき・まや)

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社会保険労務士、採用定着士。大槻経営労務管理事務所所属。

実家の寺院を継ぐことになり、子の小学校入学を機に夫とともにUターン。現在フルの在宅勤務。

事業規模、業種ともさまざまなクライアントを担当し、「離れていてもできる! 伝わる! やりきれる!」を実践中。


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