そんな同市には、ChatGPTを導入後、報道機関や他自治体から問い合わせが相次いだ。寒川さんの電話は1日中鳴り続けたという。
そこでChatGPTを活用した、他自治体向けの「問い合わせ応対ボット」の運用を開始した。同ボットは、ChatGPTの取り組みに関する質問を入力すると自動的に回答してくれるもので、自治体では初の試みだ。
問い合わせ対応時間の削減には、応対ボットのほか、自治体AI活用マガジンも効果を見せた。同マガジンには横須賀市のChatGPT導入経緯をはじめ、ChatGPTの活用方法についてさまざまな角度から発信している。応対ボットでは伝えきれない、取り組み背景のストーリーまで読めるのがポイントだ。
寒川さんは「多くの問い合わせを頂いたことで、実は多くの自治体が生成AIに興味があると分かった」と話す。横須賀市には、現在も1日に2組以上の自治体が視察に訪れている。
そんなAI先進自治体である横須賀市だが、今後生成AIをどのように市の業務へ活用していきたいと考えているのだろうか。
今後の生成AIの活用について、自治体向けの問い合わせ応対ボットの次段階として、ChatGPTで市役所内の職員間で発生する会計・予算の手続き完結化を目指している。
同市は今後を見据え、他自治体向け問い合わせ応対ボットを運用しながら、回答にエラーが出た際のデータを収集している。現時点で回答はほぼ正確。ChatGPTが対応できない質問には「分からないのでこちらへ問い合わせてください」と連絡先を案内している。
誤った答えを返した例はないが、ボットが分かるであろう内容も「分からない」と答えているケースは確認されたという。引き続きデータを集めつつ、調整を重ねていく。
同市は、市民が関わる業務でのChatGPT活用に関して、職員向けのシステムが安定し、市民に不利益が生じないという確信が持てた際に、初めて視野に入ると考えている。
「いつかは市民向けに開放して、問い合わせをAIで回答できるようにしたい――そんな未来を想像しています」(太田さん)
しかし、問い合わせに対して「絶対に間違えられない」のが行政だ。ChatGPTが誤った回答をしては取り返しのつかないことになる。対市民への生成AI活用は特に慎重に進めたいと続けた。
「ChatGPTそのものを使うのではなく、ChatGPTをパーツとして使用するシステムの開発を進めていきます。そのためには技術力向上が不可欠。研修や他の自治体とのコミュニケーションを通じて、さらなる進化を目指していきます」(寒川さん)
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