自治体DX最前線

「手の内は全て明かす」 ChatGPT導入一番乗り、横須賀市が情報を“隠さない”ワケAIが市民の対応をする日は来る?(1/2 ページ)

» 2023年11月17日 08時00分 公開
[ほしのあずさITmedia]

 ChatGPT導入「全国一番乗り」を果たした、横須賀市の躍進が止まらない。市役所業務におけるChtatGPT活用の実証実験を皮切りに、問い合わせ応対など活用の幅を広げている。

 中でも横須賀市が特に強化しているのが「情報発信」だ。2023年8月には全国15自治体からなる「自治体生成AIマガジン」を立ち上げ、ChatGPT導入に関するさまざまな情報を公開している。

<参考:ChatGPTに「霊長類最強の女性に勝つ方法」を聞いてみたーー自治体がnoteでゆる〜く情報発信する狙い

 横須賀市がChatGPTに関する情報を発信し続ける背景には「隠さない」ポリシーがあるという。しかし、時間と労力をかけて得た情報を公開することに、ためらいはなかったのだろうか? 横須賀市デジタル・ガバメント推進室の寒川孝之室長と太田耕平さんに話を聞いた。

AI 横須賀市がChatGPTに関する情報を「隠さない」理由は?

「失敗も隠さず全部見せる」 横須賀市のポリシー

 横須賀市が自治体として初めて業務にChatGPTを導入したのは、23年4月。

 同市ではDX推進の取り組みを3年以上続けており、22年度の夏のDigi田(デジデン)甲子園(地方公共団体、民間企業・団体などさまざまな主体が、デジタルの力を活用して地域課題の解決などに取り組む事例を幅広く募集し、特に優れたものを内閣総理大臣賞として表彰する取り組み)では、引っ越し手続きをサポートするオンラインサービス「書かない窓口」が4位入賞を果たすなど、もともとデジタル技術の活用には前向きだった。

 そんな横須賀市はChatGPT導入にも素早く対応した。同市はChatGPTに対して「使わなきゃ損」だと感じたと話す。「どうせやるならば、1番を取りに行こう」と自治体初の導入に向けて動き始めたという。

 「ChatGPTは2000年代にインターネットが出始めた時と似ています。人は新しいテクノロジーに対して警戒心を抱くものです」(寒川さん)

 検討を始めて1カ月。ChatGPTのAPI機能を連携させることで、横須賀市全ての職員が普段業務で使用しているチャットツールで、文章作成や要約、誤字脱字のチェック、アイデア創出などに活用できるようにした。懸念点として多く挙がるセキュリティ面に関しては、入力した情報を学習しないようにシステム構成した。

 市役所内では定期的に「ChatGPT通信」を配布し、効果的な利用方法を周知している。興味を持って読んでもらえるよう、くだけた内容にしており好評だという。

AI 市役所内でも積極的に「ChatGPT」利用方法を周知している(提供:横須賀市、「ChatGPTボットのつかいみち」

 隠さずにドンドン見せていくことで、日本の底上げをはかりたい――。横須賀市・上地克明市長の考え方だ。失敗や課題を公開することで、他自治体の導入の後押しになる。この「隠さない」ポリシーのもと、横須賀市はChatGPTの導入において苦労したこと、失敗したことを含めた全ての情報公開を続けている。

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