嫌われる上司の「デスク爆弾」 ストレスフリーな雑談は、どうすれば生まれる?(3/3 ページ)

» 2023年11月24日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]
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なぜ社員同士の雑談が大切なのか

 そもそもなぜ、社員同士の雑談は大切なのか。

 「昭和の時代は、雑談イコール無駄口、生産性を下げるものとして捉えられていた」と清水教授は話す。

 雑談に対する評価が一変したのは2000年代後半。企業の経営者層が雑談をビジネススキルの一つと考える風潮が広がり、13年には教育学者の齋藤孝さんの著書『雑談力が上がる話し方』がベストセラーとなった。

 日本能率協会が21年に実施した「ビジネスパーソン1000人調査」では、雑談が「人間関係を深める」ことにつながっていると考える人が7割超、雑談があることは自身にとって「プラス」と考える人は8割に達している。

 清水教授は、雑談の本質を「相互的な自己開示によるラポール(信頼関係)の醸成」だと説明する。

清水教授は雑談の本質を「相互的な自己開示によるラポールの醸成」だと説明する(サントリー提供)

 「雑談とは、自身の経験や将来の予定、意見や考えなど、自分の感じたことを自己開示すること。自己開示を続けることで共感が生まれ、共通知識が増える。こうして互いの心理的距離が近付いていく」(清水教授)

 社員同士のラポールが職場のあちこちに醸成されることで、連帯感や仲間意識が生まれ、職場自体がアウェイではなくホームになる。こうした職場では、社員の心理的安全性が確保され、会議の場などで言いにくいことも言いやすい雰囲気が生まれるという。

 ラポールが形成されている上司と部下、形成されていない上司と部下では、コミュニケーションの質も大きく変わってくると清水教授は指摘する。

 社員同士の信頼関係を醸成する上で欠かせない雑談だが、コロナ禍を経てテレワークやハイブリッドワークが普及し、雑談の機会は大きく減った。企業は、社員同士の雑談の機会をいかに作っていけばいいのか。

企業は社員同士の雑談の機会をいかに作っていけばいいのか(サントリー提供)

 清水教授は、雑談を以下の5つのタイプに分類して説明する。

雑談の5つのタイプ

(1)メイン雑談

(2)時間つぶし雑談

(3)ながら雑談

(4)ワンクッション雑談

(5)いきなり雑談

 (1)「メイン雑談」はカフェや居酒屋などで雑談をするために集まってする雑談。(2)「時間つぶし雑談」は会議が始まる前のおしゃべりなど、主活動の前に集まった人がする雑談。(3)「ながら雑談」は作業をしながらの雑談。(4)「ワンクッション雑談」は会議後など、主活動が終わり次の行動に移る前にする雑談。(5)「いきなり雑談」はエレベーターなどで偶然出会って始まる雑談――を意味する。

 清水教授は、テレワーク下では(2)〜(5)の雑談はほぼ起こらないとする。社員同士の効果的な雑談を生み出すためには「出社日に(1)のメイン雑談の機会を意識的に作ることが重要」だという。

 かつて、社員同士のメイン雑談の機会は飲み会などが中心だったが、現在の若者の価値観では、飲み会は必ずしもメイン雑談の機会とはならない。そこで、オフィスに自然に雑談が生まれるような環境を作り出すことが重要になるという。「社長のおごり自販機」もそのツールの一つだろう。

 サントリーの調査結果からは「適切な雑談時間=3分」という発見もあった。清水教授は、接触回数が多いほど相手に好感を持つ「単純接触効果」についても触れ、「3分程度の短い雑談をオフィスで繰り返すことが、社員同士が人間関係を深める一つの正解なのかもしれない」と話している。

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