店の風紀は乱れない? 相次ぐ身だしなみルール緩和の背景 きっかけとなった大手の施策とはゾフ、ドンキ、ベルク……(5/5 ページ)

» 2023年11月27日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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ただ緩和するだけでない「意味のある自由化」を

 最近の経営論で、必ずといっていいほど出る言葉が「ダイバーシティ&インクルージョン、そしてエンゲージメント(DI&E)」です。中でもダイバーシティは、流通・小売り・サービス業が最も遅れていた部分といえます。筆者は、日本の学校教育で続く「制服を着るのが当たり前」「服装、頭髪基準を守れなければ罰則」という文化によって形成されたものに起因すると考えています。

22年10月に制服をリニューアルした、びっくりドンキー(出所:プレスリリース)
アダストリアグループのブランドとコラボした、ゾフのユニフォーム(出所:プレスリリース)

 しかし、校則も最近では変化し始めています。制服の撤廃やジェンダーレス制服に変える学校も出てきました。この流れは、企業側でも起きています。基準の緩和は業界特性を踏まえる必要がありますが、身だしなみを楽しむくらいの余裕がなければ、顧客に喜んでもらえるようなサービスにはつながらないでしょう。なぜならば、顧客に喜んでもらうには、スタッフが楽しむことが一番だからです。

「JINS」も22年に制服をリニューアルした(出所:プレスリリース)

 まずは従業員が満足できる環境にすること。それが、誠意のあるサービスや接客につながります。ただし、猫も杓子も身だしなみ基準を緩和すればいいわけではありません。記事前半に各社の事例を図表でまとめた通り、企業理念やビジョンとの連動性が必要です。

 中でも、人を大切にする、多様性を尊重する、常識を打ち破るような人材を育成したいなど、企業の価値観に「人を大切にしたい」という思いがあることが絶対条件です。これからはますます「人」が重要になります。スタッフが楽しく働いて、顧客に喜んでもらえる店にこそ、人は集まるのです。

スタバのドレスコード改訂は大きな影響を与えた(出所:スターバックス公式Webサイト)
スタバのドレスコード改訂は大きな影響を与えた

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。直近では著書『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第5版]』を刊行した。

岩崎剛幸の変転自在の仕事術


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