トヨタの凄さと嫌われる理由池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2023年11月27日 09時41分 公開
[池田直渡ITmedia]

 トヨタは良くも悪くも常に話題の中心にいる。常に引き合いに出され、褒められたり、貶(けな)されたりするのは年中目にしていると思う。今回はそのトヨタの経営を深掘りしてみたい。

 世界の多くの会社の中で、マーケットシェアでトップを取りながら、アンチが多くファンが少ないという変わった会社を筆者は2社思い浮かべる。トヨタとマイクロソフトである。

 ユーザーはなんだかんだといいつつもトヨタとマイクロソフトの製品を購入し、製品を使いながらも実はそのユーザーには結構な割合でアンチがいる。そんな会社は珍しい。普通は嫌いな会社の製品は買わないし、使わない。

 使わないと損だから、あるいは困るから仕方なく使っているのだろうと思う。筆者もマイクロソフトには正直あまり良い印象はないのだが、データのやり取りのデファクトスタンダードになってしまっているからやむを得ず、高い金を払って使っている。

個人の趣味として買うならトヨタ車は買わない

 筆者はそもそもクルマを所持していないが、個人の趣味として買うならたぶんトヨタを買わない。ライトウェイトスポーツを買うだろう。国産新車で挙げるなら、マツダのロードスターかダイハツのコペン、あるいはスズキのジムニー。もう少し夢を見るなら古(いにしえ)のオースチン・ヒーレースプライトかロータス・エラン、乗り潰しても心が痛まない文化財的価値の低いケーターハム・スーパーセブンだ。それもショートコクピットでケントユニットを詰んだ1980年代初頭あたりのモデルだろう。

1958年にデビューして、今なお熱烈なファンを持つオースチン・ヒーレースプライト
80年代の1600スプリントを復刻したケーターハムスーパーセブン1600。エンジンはケントユニットに代わりフォード・シグマ・ユニットを搭載

 アストンマーチンのDB4GTザガートだとか、アルファロメオのティーポ33ストラダーレあたりに憧れた時代はあったけれど、しかるべきガレージと維持する気力や財力はいまさらどうにもならない。

 もっといえば、こうした自動車遺産を預かって、その先の未来へ向けてバトンを渡していく使命みたいなものに使役されるのは決して楽なことではない。そういう自動車遺産の管理者になって苦労している趣味人に大勢会ってきたので、身の丈をわきまえているつもりだ。それでも大して濃くはないが、まあ要するに根は趣味人なのだ。

 トヨタはたぶんそういう世界の正反対に位置している。信頼性が高く実用的で、社会適合性が高く、かつオーナーの欲望がむき出しにならないクルマだ。だから役に立たないスポーツカー選びではなく、現実に取材のアシとして、あるいは別の趣味としての自転車を積んで出かけようという話になった場合、トヨタの製品は俄然候補に上がってくるわけだ。

 都内の移動と地方取材の両方を考えれば、やっぱりリッター30キロ超えのハイブリッドは魅力的だし、長距離移動のお供としてのADAS(先進運転システム)も十分に実用的だ。「下取りを考えてクルマを選ぶのは邪道だ」みたいな突っ張りもいらない。普通に高く売れる。実用上、どこにも我慢がいらない。

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