新時代セールスの教科書

「飛び込み営業」がついに死語に!? AIの台頭でくつがえる営業の常識(3/3 ページ)

» 2023年12月07日 08時00分 公開
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営業活動はどこまで自動化できるか

 これまでのお話で、営業プロセスにおける自動化が可能で、すでに着手している企業が存在していることについてはご理解いただけたかと思います。

 日本で自動化が進む範囲は一部ですが、顧客体験におけるオンラインチャネルが増え、商談がオンライン完結するようになれば、さらに広い範囲での自動化も進んでいくと考えられます。

 それでは今後、営業活動における「後半」部分は、どのように自動化・省力化が進んでいくのか考えていきましょう。非提携業務が多く、自動化の難易度が高いとはいえ、自動化できる領域は少なくありません。

 下記は営業活動の全体フローを図化したイメージです。赤色でハイライトしている箇所が、先ほどご説明した既にテクノロジー活用による自動化が進んでいる業務領域となります。

飛び込み営業 営業プロセス全体のフロー

 例えば、サービスのトライアル期間中の顧客を対象に営業アプローチの自動化を行うことで、トライアル期間中に有償化の早期特典を案内するメールや、トライアル期間終了前に「まもなく機能が使えなくなる」と伝えるメールを自動送付できます。

 また、商材がサブスクリプション型の課金システムであれば、契約の更新時期に向けて、1カ月前更新で一つ上のプランを試せる特典を案内するプログラムを組んでおくことで、さらなる効果を実感いただき、アップセルのチャンスを得ることもできるでしょう。

 このように、自社の商材に応じて自動化を複数走らせることで効率化し、営業担当が対応すべき業務に注力できる仕組みづくりを実現できます。自社の営業活動の全体を見渡し、活用できるデータに応じて、可能な範囲から取り組みを進めてみてください。

重要なのは「信頼できるデータ基盤」の構築

 ここまでご紹介してきたとおり、AIを活用するためには段階を踏むことが必要となります。今後、AIの活用を志す企業が最初に直面するのは「信頼できるデータを持っているかどうか」という点になるでしょう。

 自動化の機能開発が進み、営業活動を支援する技術基盤が発達したとしても、AIが学習するためのデータがなければその恩恵にあずかることはできません。組織内に散らばったデータを統合し、初めて顧客と接点を持ったタイミングから、契約後のやりとりに至るまで顧客に関する情報を時系列でつながるように一元管理し、データがサステナブルに蓄積される「信頼できるデータ基盤」を持つことが重要になります。

 これから飛び込み営業は全体的な傾向として減っていくことは間違いないでしょう。企業が訪問しない営業スタイルに切り替えていくにあたり、インサイドセールスの立ち上げやシステムの導入を検討される場合は、部分最適な視点ではなく、自社組織が将来的にどのようにテクノロジーを活用して営業活動を行っていくのか、中長期的な構想を描いた上で、全体最適になるようにデザインしてみてください。それが将来の大きな成長につながるはずです。

筆者プロフィール:村尾 祐弥 株式会社Magic Moment

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中央大学法学部卒業後、2社を経てGoogle Japan、freeeで営業部門の統括及び責任者として事業成長を牽引。2017年にMagic Momentを立ち上げ、2018年9月より経営を本格化。累計資金調達額20億円(DCMベンチャーズ、DNX Ventures、三井物産、ほか)。LINEやUSEN、凸版印刷等、多くのエンタープライズ企業の営業変革を人・テクノロジー・オペレーションの全方向から支援。2021年にローンチした営業AI行動システム Magic Moment Playbook は、SMBの大量解約の時期を乗り越え、現在はエンタープライズ企業の生産性向上、LTV向上を非連続に実現している。


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