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「やりたい仕事だけ」しか頑張らない若手 それでも叱ってはいけない?(1/2 ページ)

» 2023年12月14日 12時20分 公開
[児玉結ITmedia]

 新入社員や若手の育成はいつの時代もマネジメントの重要テーマです。1990年代半ば以降に生まれたいわゆるZ世代の活躍が目立つ昨今、「Z世代の育成」というテーマは特に、管理職層の関心を集めています。

 Z世代には、モノやお金、競争に勝つなどの分かりやすい価値よりも、自分自身の成長、人や社会への貢献といった無形の価値を大事にする傾向があります。こうした特徴が影響してか「自身の成長や貢献を実感できる業務には力が入るが、そう感じない業務にはいまいちモチベーションが上がらないようだ」と、若手の育成に悩む管理職の方も少なくないようです。

 Z世代部下が、仕事によってやる気にムラがある。こんなとき、上司としてどのように関わるべきなのでしょうか?

業務によってやる気にムラがある……そんな若手への接し方「3箇条」

 筆者が開発を担当する管理職向け研修では、Z世代の若手社員について、以下のような悩みの声を聞く場面があります。

「真面目で素直なんだけど、全体的にやる気が感じられない」

「自分がやりたい仕事は頑張るが、そうでない仕事とのギャップが激しい」

 Z世代の特徴の1つに、貢献意欲と成長意欲の高さが挙げられます。筆者が所属するリクルートマネジメントソリューションズが2023年度の新入社員を対象に行った調査では、仕事をする上で重視するキーワードの上位2位がまさに、「成長」「貢献」の2つでした。

photo 新入社員が仕事をする上で重視すること(リクルートマネジメントソリューションズの2023年度インハウス型新入社員研修およびWeb学習プログラムの受講者1840人に対して、仕事をするで重要視するキーワードを聞いたもの。調査時期は23年4月)

 これは、裏を返せば「自分自身の成長につながる」「人や社会の役に立っている」などの意味を感じられない仕事には、エンジンがかかりづらいということでもあります。

 本稿では、このような特徴をもった若手社員の育成に悩む管理職や育成担当者の皆さんに、若手社員との関わり方を考えるヒントをお伝えします。

「この仕事やる意味ありますか?」の意味

 意味を感じられない仕事に取り組むことがつらいのは、若手に限ったことではなく、おそらく誰にとっても同じはずです。

 その中でも特にZ世代が「この仕事ってやる意味あるんですか?」と疑問を抱きがちなのはなぜでしょうか。そのカギは、Z世代が生まれ育った時代環境にありそうです。

 生まれた時からインターネットがあり、スマホやSNSの普及とともに育ってきたのがZ世代です。商品、サービス、方法などを比較して、より良いものを選ぶのが当たり前。具体的に若手社員の話を聞いてみると、例えば「同じ仕事を自分がやるよりも先輩がやった方が早いし質が高いのに、なぜ自分?」と素朴に疑問を感じるそうです。

 また、学校や家庭において先生や親から厳しく指導されたり、強制的に何かをやらされたりする経験が前の世代に比べて少ない世代でもあります。上司世代が幼少期から「納得のいかないことも、やり続けるうちに意味が見いだせた」経験をしてきているのに対し、我慢経験・理不尽経験の少ないZ世代は、納得してからでないと動きづらい傾向があるようです。

 さらに、前述した「成長意欲」「貢献意欲」の高さから「この仕事は自分の成長につながるのか」「誰の何の役に立っているのか」が明確なことでより頑張れるという特徴も分かります。

 このように、Z世代の「この仕事ってやる意味あるんですか?」という発言や態度には、この世代の価値観に根差したさまざまな「意味」が含まれているのです。

 では、管理職や育成担当者は、このような若手社員とどのように関わっていけばよいのでしょうか? ある架空の若手社員を例に考えてみましょう。

明るく協調性が高いが主体性が物足りない若手社員・Aさん

 Aさんはあるメーカーの営業企画部門の若手社員です。入社して2年間、営業の現場を経験し、今年から営業企画に異動してきました。主に営業数値の管理と、販促キャンペーンの企画などを担当しています。

 明るく人当たりの良い性格で、異動してきてすぐにチームメンバーとも打ち解けました。やや気難しく、若手から敬遠されることの多いベテランの先輩社員とも、特に問題なくコミュニケーションが取れているところは安心できます。

 一方で、営業企画として重要な数値管理の仕事は、Excelのスキルも含めてまだ安心して任せられるレベルにはありません。ルーティンとして決まっている作業をこなしてはいますが、ちょっとしたミスが多く、指導担当の先輩社員も手を焼いています。

 上司のXさんが困っているのは、ミスがあっても謝りはするものの、「数値系は苦手なんです」と改善の意欲が見えないこと。苦手を克服するよりも、販促企画などの自分が楽しいと感じる仕事に優先的に時間を使っており、進歩が見られません。

 さて、Aさんのような若手社員に対し、上司Xさんはどのように関わっていけばよいのでしょうか。具体的な関わり方のポイントを3つご紹介します。

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