――若者をターゲットにすることで、そこから上の世代にも広がっていきますし、その製品自体を長く愛飲してもらえる可能性も増えます。20代に訴求するマーケティングとしての「チルアウト」だったわけですね。
そうです。狙い通り20代を中心にして、そこから30代、そして40代へとターゲットが広がっていっています。特に20代を中心とする若い人たちは、友達と一緒にゆったりする時間を大切にする「チル」といったカルチャーが新たに出来上がっています。そこから銭湯やサウナ人気にもつながっているわけですが、こうした若者文化にチルアウトが一緒に入っていければと思っています。
――本来ならリラクゼーションドリンクを欲しがっている層は、疲労が溜まりやすいもっと上の年代のようにも思うのですが、実はまだそこにはリーチしていないのですね。
そうですね。当社は戦略的にも年代的に若いところから製品を展開していますので、まだここから40代以上の世代にも広げていきたいと思っています。
――例えば若者が多く集まる東京・高円寺の銭湯「小杉湯」とは、数多くのコラボレーションを展開しています。
小杉湯さんとのコラボは20年から一緒に取り組んでいます。最初は製品をサンプリングしていただくところから始めました。小杉湯さんは若い方が結構いる銭湯で、とても好評だったところから継続的な取り組みになりました。
最初は飲み物だけのコラボだったのですが、小杉湯さんとは次第に入浴剤まで一緒に開発することになりました。
――コカ・コーラが入浴剤を共同開発するのは例がないように思います。
当社としても例がないと思います。小杉湯さんではよく変わり湯で独自の入浴剤を投入しているのですが、小杉湯さんと付き合いの長い入浴剤の業者を紹介してもらい、「チルアウトの湯」という入浴剤が22年に誕生しました。「チルアウトの湯」は、小杉湯さん以外にも全国の温浴施設で何度も展開しています。
――なぜ入浴剤を開発しようと思ったのでしょうか。
個人的なストーリーになってしまうのですが、私自身お風呂の中でゆったりする時間がすごく好きなんですね。さらに言うと、お風呂に入りながらチルアウトを飲むのが好きです。そこで、お風呂でチルアウトにつかっているような香りやリラックス体験を提供できたら面白いのではないかと思い、開発に至りました。
――前例がないことで大変だったと思います。入浴剤の成分はそのまま飲料のものを参考にしたのでしょうか。
飲み物に使っている香りの成分は参考にしていますが、お湯の中に入れると香りの感じ方のバランスが結構変わってしまいます。このバランスをお湯に入れたときにどう再現するか、飲み物の成分とバランスを変えながら試していきました。試行錯誤の結果、チルアウトに近い香りを再現できたのですが、今度はお湯が循環する過程で香りがなくなってしまう問題も起こりました。
他にも、飲み物のチルアウトは無色透明なのですが、それでは変わり湯になりませんので、入浴剤にはチルアウトのイメージカラーである青系の色を足しています。ただ、これも途中で色が消えてしまうことがありました。こうしたテストは小杉湯さんで行ったのですが、お風呂を張る1日1回しか試せませんから、大変でしたね。構想から完成するまで半年ぐらいかかりました。実際の開発期間は1カ月から2カ月ぐらいで、その後小杉湯さんでテストして完成させていった形ですね。
――23年10月には、飲み物と湯に加え、「住」まで提供するコラボ「寝落チルハウス-CHILL&SLEEP-」を展開しました。
「湯」に続くチルアウトを通じた体験価値を顧客に提供したい思いから始めました。そこで考えついたのが、お風呂から上がった後にくつろぐ「住」を提供しようとする試みですね。
当社と取引があるNTT東日本グループが運営する睡眠コミュニティー「ZAKONE」さんと、小杉湯さんとを当社がつないだことで実現したイベントです。小杉湯さんに隣接するシェアスペース「小杉湯となり」と「小杉湯」をお借りして、そこの喫茶店でチルアウトとのコラボメニューを提供したり、最新の睡眠器具を体験してもらったりする取り組みを実施しました。
――今後も小杉湯とのコラボは続くと思います。「住」に続く今後の展開はどのようなものを考えていますか。
コロナ禍以降世の中は大きく変わっていて、人が感じるストレス自体が大きく変わってきていると思っています。チルアウトに対する需要も、今後も変わり続けると思っています。こうしたリラクゼーションドリンクに人々が求めるものの変遷を見ながら、今後も志を同じくする企業さんと共に体験型の企画を展開していきたいと思っています。
――人々がリラクゼーションドリンクに求めるものがまだ固まっておらず、発展途上というのは新カテゴリーならではの課題とも言えそうです。
われわれはリラクゼーションドリンクという、新たなカテゴリーの創造を展開しています。その上では、コロナ禍からポストコロナといった、時節ごとの人々が抱えるストレスと向き合いながら展開していく必要があると考えています。人々にどういうストレスがあり、そこにどう展開していけばリラクゼーションドリンクを訴求することができるのか。ここをたえず模索し、どう新しい顧客層を取っていくかを考えないといけません。
――まさに新境地の開拓と言えそうです。今後のリラクゼーションドリンク市場の展開についてどのように見ていますか。
既に国内の同業他社もリラクゼーションドリンク市場に参入してきています。飲料企業だけでなく、ドラッグストアさんも開発している他、海外ブランドのドリンクも日本に上陸しています
今後も市場として、カテゴリとしてどんどん大きくなっていくと思います。チルアウトもリラクゼーションドリンクのパイオニアとしてどんどん広げていきたいですね。
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