筆者は記事の執筆を生業としているが、実は作文が得意ではなかった。というより、大嫌いだった。理由は、小学校時代の通信簿に「語彙力がない」と書かれたからだ。
そこから「自分には作文能力がない……」と少々飛躍した解釈をし、文章や国語の授業に苦手意識を持つようになった。しかし、幼少期の作文に対する苦手意識はどうやら筆者に限った話ではないようだ。
沖縄本島から西に約100キロの場所に位置する、久米島・大岳小学校の児童も同様の悩みを抱えていると小耳にはさんだ。作文が苦手な児童の文章は、時系列通りに並べただけだったり、書き出しから結びまでが1パターンの紋切型になってしまっていたりという課題があった。
しかし、大人になるまで作文嫌いだった筆者と異なり、彼らは県主催の体験学習「沖縄離島体験・デジタル交流促進事業」(運営:株式会社カルティベイト・株式会社りゅうせきフロントライン共同企業体)の中で、自分の作文に自信を持てるきっかけとなるサービスに出合えたという。
一体、どのようなサービスが児童の苦手意識を取り除くきっかけになったのか。カルティベイト(沖縄県那覇市)の開梨香社長、スタジオユリグラフ(沖縄県名護市)の森石豊社長、大岳小学校(沖縄県久米島町)の金城有希さんに話を聞いた。
「とあるサービス」とは、AIを活用したライティング支援ツール「Xaris(カリス)」だ。まず、AIが「書きたい内容を教えてね」と質問する。書きたい内容を指示すると、AIがさまざまな質問を重ねてくる。それに回答していくだけで、最終的にAIが文章を作成してくれるというサービスだ。
児童は体験学習プログラム全体の感想文作成にカリスを活用したわけだが、当初はその予定ではなかった。
今回の体験学習は、離島の児童を本島に派遣し、離島と本島との相互交流によって、地元離島に関する発信力の強化を目的とした3泊4日のプログラムだ。本島の小学生との交流や大学見学、スタートアップの仕事に触れる職業体験などが用意されていて、カリス体験はあくまで、スタートアップの仕事に触れるという1つの体験でしかなかった。
しかし、急きょ予定を変更。カリスを使って感想文を書くことになった。その理由について、開さんは「今回の体験学習のテーマは『仕事』でした。参加してくれた児童が大人になる頃、ビジネスや職業の在り方は大きく変化していると思います。変わり続ける時代に適応できるように、苦手だった作文に最新技術を活用して挑み、自分の中にある思いや感動を体験してもらいたい。先生たちの作文指導にもフィードバックできるかも、という期待もありました」と振り返る。
金城さんによると、作文指導の際に、文章を書くのが好きな児童は意欲的に取り組めるが、作文が苦手な児童は書き出しや構成を示さないと書けないことも多かったという。しかし、カリスを使った結果、13人全員が30分という短い制限時間の中で感想文を完成させた。
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