実際に文章を作成する工程と、最終的な感想文を見てみよう。児童の回答に対して、AIが感想文を作成するための具体的な質問を投げかけており、それに児童が自分の言葉で回答している。
この問答を繰り返し、最終的にカリスが感想文を生成する。仮にそこに意図しない出来事や感情が含まれている場合には「これは違うよ。こういう意味だよ」と、内容を修正することもできる。その他、しっくりこない文章を修正するためのアドバイスや続きにどんなことを書けばいいかの相談にも答えてくれるという。
最初は戸惑っていた児童も5分程度で操作に慣れた。音声入力に対応しているため、児童はAIからの質問に自由に回答していくだけでよい。「返事があるのがおもしろい」「楽しい」などポジティブな反応が見られたという。
金城さんは「普段の授業でICT学習としてPCを使用しているものの、未知のアプリを使って感想文を完成させられるのか? という不安もありました」と話す。
「作文が苦手な児童は、読めない・書けないから作文が嫌いになってしまいます。AIが質問してくれて、言いたいことを引き出してくれて、自分なりの感想文ができあがっていく。作文の授業内では見たことがないくらい、表情がイキイキとしていました」(金城さん)
紙と1対1で向き合っても、AIのように質問してくれない。出来事や感情を整理し、際立たせるポイントを考え、執筆する。自分がゼロから作り上げる必要があり、苦手意識を持つ児童がいるのもよく分かる。
「普段あまり文章を書く作業で光を浴びない児童が、自分の気持ちを素直に表現できていました。彼らにとっても自信につながったと思います。普段の国語の授業で自分が1から作った文章ではあんなに自信は持てていないと思います。感想文を読み返しているときや発表時の表情が物語っていました」(金城さん)
体験学習を終え、久米島に戻った児童たちがその後も「カリスを使いたい!」「もうカリス使えないの?」と金城さんに尋ねるほど、体験として大きかったようだ。
児童の作文に対する苦手意識を改善させ、新たな可能性を提示した今回の作文体験は「成功事例」といえる。しかし、教育の観点では疑問も残る。それは「自身で考えて書く力を阻害してしまう可能性」についてだ。
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