「缶コーヒーを飲まない若者」に人気のボス缶 なぜ「2カ月で2000万本」も売れたのか(1/2 ページ)

» 2023年12月26日 10時30分 公開
[小林可奈ITmedia]

 突然だが、最後に缶コーヒーを飲んだのはいつだろうか。筆者はよく思い出せない。それもそのはず、実はこの10年で、缶コーヒーの販売料は約60%にまで落ち込んでいる。プラカップのコーヒーをカフェやコンビニで購入することが一般化するなど、コーヒーの飲用シーンに変化が起きているのだ。

 ハリウッド俳優のトミー・リー・ジョーンズ氏が扮する“宇宙人ジョーンズ”が、働く人々に寄り添いながらコーヒーを片手に一息つく──そんなCMでおなじみの缶コーヒーの「BOSS」シリーズを展開するサントリー食品インターナショナルでも、この課題に直面していた。

 同CMシリーズでも訴求してきた通り、同社の缶コーヒー商品は「仕事の休憩時間に購入し、一服したら仕事に戻る」というスタイルのヘビーユーザーに支えられてきた。しかし、働き方の変化などの影響でこうした購買行動は減少。特に若年層など、なじみが薄い消費者に手に取ってもらうことも考えると、従来の缶コーヒーにはない価値での訴求が求められていた。

 こうした層に向けて2023年3月に発売したのが「カフェインを摂取できることを打ち出したパッケージ」の商品だった。この「ボスカフェイン」という新商品、発売2カ月で販売本数は2000万本を超えるなど、売れ行きは堅調とのこと。同年9月には、カフェイン含有量をさらに強調したパッケージにリニューアルした。

photo ボスカフェイン(同社公式Webサイトより)

 「カフェインを摂取できる」ことを打ち出すパッケージが、なぜ「缶コーヒーをあまり飲まない若い人」をターゲットに好調な売れ行きを示しているのか。同社広報部に聞いた。

なぜ「コーヒーをあまり飲まない人」にウケたのか

 同社によれば昨今、消費者には気分やシーン・時間帯などに応じて、意識的にカフェイン量をコントロールする動きが見受けられる。例えば、夕方以降や体を休めたい時にはデカフェコーヒー・ルイボスティー・麦茶などのノンカフェイン飲料を、気持ちを切り替えたい時にはコーヒーや緑茶などカフェイン入り飲料を選ぶなど、カフェインの含有量によって“飲み分け”を行っているのだ。

 そんな中、消費者調査において、カフェインを摂取する目的で缶コーヒーを「使う」と表現する消費者が一定数いることが分かった。ボスカフェインは、これをヒントに開発された。

 カフェイン摂取量のコントロールを心がける消費者は、時にはコーヒーを控えることもあるはずだ。しかし、こうした層がコーヒーを「使う」際に選ばれる商品を目指し、カフェイン含有量が通常の缶コーヒー(70〜160mg)よりも多い(200mg)ことを商品の“売り”とした。

 開発段階では、日常的に飲みやすいコーヒーの味わいとカフェイン量を両立させるため、100回を超える試作を実施。カフェイン含有量の多い品種の豆を使用したほか、苦味を軽減するために浅煎り豆をブレンドしたり、ほどよい甘さのフレーバーを採用したりして現在の風味が完成したという。

 発売当初のパッケージは「CAFFEIN」と大きくデザインされているものではあったが、英語表記が大きくスッキリした印象であることなどから「パッケージからは想像できないカフェイン量」とSNSを中心に話題になった。話題性の創出には成功した一方で、カフェインの多量の摂取は控えたい人に対して伝わりづらいのではないかとの指摘も相次いだ。

photo 発売当初のパッケージ(画像は同社提供)

 これを受け、23年9月にはパッケージをリニューアル。「コーヒーでカフェイン200mg」との大きな表示を設け、よりターゲット層に対して効果的な訴求ができるよう調整したという。

 当初の想定通り、20〜30代やこれまで缶コーヒーに接点がなかった消費者に多く購入されており「炭酸が苦手でエナジードリンクが飲めなかったが、この商品でカフェインがとれて助かっている」「飲みやすい味わいで、カフェインが摂取できことが画期的」といった反響が寄せられているという。

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