2023年4月、東京・新宿歌舞伎町に新たなランドマーク「東急歌舞伎町タワー」が誕生した。地上48階、地下5階、高さ約225メートルと、圧倒的な存在感を見せる。これまで歌舞伎町のランドマークとして名をはせていた、TOHOシネマズ新宿のゴジラも驚いているだろう。
驚くのは、その壮大さだけではない。大型ビルにもかかわらず、オフィスや高級アパレルなどが入っていない異例のフロア構成になっている。映画館や劇場、ライブホール、ゲームセンターといったエンタメ施設と、価格帯の異なる2つのホテル、そして日本全国のソウルフードを集結させた横丁という、エンタメとホテルに振り切った「カオス」なラインアップなのだ。
なんだか「ターゲットがよく分からない」という印象を覚える。劇場やホテルなど、各施設ごとのターゲットは推測できるが、東急歌舞伎町タワー全体でのターゲットが見えにくい。
東急の執行役員で、東急歌舞伎町タワーを運営するTSTエンタテイメント(東京都新宿区)の木村知郎社長は「あえて属性などでターゲットを設定していない」と言い切る。
「ホテルとエンタメに特化しているのは珍しく、新業態だと思います。普通の商業施設であれば、まずペルソナ(理想のお客さん)を設定しますが、歌舞伎町はそもそもさまざまな方がいらっしゃる街です。そのため属性で区切るのは難しい。そこで『好きを極める』というコンセプトが生まれたわけです」
開業9カ月、好きを極める人々が東急歌舞伎町タワーに足を運びたくなるようなさまざまな仕掛けを施した。昼は劇場では郷ひろみさんのライブ、イベントスペースではバーチャルアイドルのライブ、横丁に設けられたステージでは坂道グループのアイドルのライブ、夜は地下のZepp Shinjukuがナイトクラブに早変わり、という幅広い層の好きに応えるイベントを展開してきた。
イベントのラインアップが示すように、昼と夜で来館属性が変わる。これまで歌舞伎町に訪れる機会のなかった人が東急歌舞伎町タワーに立ち寄ることで、歌舞伎町全体にどのような影響が出ているのか。人が集まり続けるための戦略は? 開業9カ月の軌跡を見ていこう。
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