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「職務給」の社員は「異動したら給与が下がる」のか?(1/2 ページ)

» 2023年12月28日 09時48分 公開

 業務内容を給与にひも付ける「職務給」を導入する企業が増えていますが、まずは管理職層からという流れになっており、一般社員層はこれまで通り職能給のままという企業が少なくありません。

 やはり多くの企業は新卒採用が主流であり、若手社員のうちは複数部門間の人事ローテーションを通じて育成する方針の企業も珍しくないからです。基本的に人事部は、若手社員に限らず社員の人事異動の柔軟性を広く確保しておきたいという意向を持っています。職能給は、担当する仕事によって給与が変わる可能性がある職務給よりも人事異動を行いやすい給与体系です。

 一方で、最近の新卒者は配属先を約束しないと入社しない、若手社員は異動先が希望に合わないと退職してしまうなどという話も聞こえてきます。仕事は自分で選ぶという考え方も広がってきており、社内公募制度やフリーエージェント制度などの手挙げの人事異動を取り入れる企業が増えています。そのような状況の中、一般社員層の職務給はどのような状況になっているのでしょうか。

一般社員の職務給 異動したら給与が変わる?

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 職務給が導入されると、担当職務が変われば給与が変わるはずだと思っている人が多いのではないかと思います。しかし実態としては、一般社員層については職務給が導入されている企業であっても、例えば人事部から経理部に異動しただけで給与が変わるということはまずありません。

 その意味では、一般社員層の職務給は多くの人がイメージするものとはかなり、様相が異なっています。担当職務というと人事、経理、営業などのような職種や、職種が同じであれば営業1課、営業2課のような所属部門を思い浮かべるでしょうが、たいていの場合、一般社員層の職務給には職種や所属部門の切り口はほとんど考慮されていません。

 職務の捉え方にはタテ軸とヨコ軸があります。多くの人がイメージするのは職種や所属部門などのヨコ軸です。これに対し、実際に職務給で考慮されているものは仕事の難易度や職責、つまり、タテ軸です。人事なのか経理なのかというヨコ軸ではなく、人事であっても経理であっても定型業務なのか企画業務なのかというタテ軸なのです。

 「それではこれまでの職能給と同じじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、人事部の説明はこうです。

 「定型業務」の等級と「企画業務」の等級があるとすると、職能の場合は、定型業務ができるようになるとその等級を「卒業」して、企画業務の等級に上がります。これを卒業方式と言います。

 定型業務の等級を卒業したからと言って必ずしも企画業務ができるとは言えませんし、実際に企画業務を担当するとも限りません。一方、職務給の場合は、実際に企画業務を担当していないと企画業務の等級にはなりません。

 また、理屈の上では、職種や部門が変わらなくても、担当が企画業務から定型業務に変わると定型業務の等級に降格されることになります。考え方としては、職務給の考え方のほうが厳格だと言えます。

 仮に、人事部で企画業務を担当していた人が未経験の経理部に異動するとどうなるでしょうか。いくら人事部で企画業務をバリバリこなしていたとしても、未経験の経理部では最初は補助的業務や定型業務を担当することになりそうです。

 職能給であれば「職能資格に降格なし」という原則や職種転換の場合の経過措置があって、異動して担当職務レベルが下がったからと言ってすぐに降格になったりはしませんが、職務給の考え方では降格です。

 ただ実際に担当職務の変更に応じて降格運用ができるのか、また、企画業務担当といってもたいていは各部門でのポジション数が決まっているわけではないので「できる=担当している」という昇格運用にならないかなどの課題が見え隠れします。総合職採用の一般社員層にとって、職能給よりも職務給のほうが厳しい制度ではありますが、現実の運用次第では職能給とそれほど違わないということになるかもしれません。

photo (図表)職務のとらえ方

 パーソル総合研究所が実施した「職務給に関するヒアリング調査』では、一般社員層の給与を職種別に変えているという企業もありました。A社は全職種の給与相場を調べて、標準的、高め、低めの3種類に分類した職種別給与制度にしました。しかし、日本では明確な職種別給与相場があるわけではないので、一般社員層は高めも低めも目立った給与水準差はなく、管理職手前くらいからようやく差が付いてくるということです。

 このように一般社員層の職務給は、多くの総合職採用社員にとってはあまり大きな影響はなさそうですが、特定職種についてはこれまでと違う施策を打ち出す企業が出てきています。

 その特定職種とは、自社の一般的給与水準では採用やリテンションが難しいIT系職種などです。新卒でも採用段階で職種別採用を行う企業が散見されるので、ここでは、総合職として採用した社員に入社後に職務給を適用する事例を2つ紹介します。

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