マーケティング・シンカ論

箱根駅伝イメージした「駅伝パック」 ナイキ筆頭に、三つ巴のシューズ争い勃発新たなトレンドになるか(3/3 ページ)

» 2024年01月02日 08時00分 公開
[酒井政人ITmedia]
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なぜ「駅伝パック」を展開するのか?

 ナイキ、プーマ、アディダスとも「駅伝パック」は箱根駅伝を意識しているのが明らかだが、面白いのは3社とも「箱根駅伝」というキーワードを謳(うた)っていないことだ。箱根駅伝を協賛しているスポーツメーカーはミズノの一社のみ。他の企業は「箱根駅伝」という言葉、レース時の写真などを営利目的に使用することができないからだ。

 では、なぜ「駅伝パック」を販売するのか。それは箱根駅伝の人気、知名度を存分に生かすための“販売戦略”になる。

 いずれも海外の一部でも展開するとはいえ、国内での販売が中心となる。抜群のテレビ視聴率を誇る番組内で、選手たちに駅伝パックと同じカラーリングのシューズを履かせて、「目立たせたい」という思惑があるだろう。

 レース用シューズは3万円ほどと高額だが、ナイキとアディダスは入門モデルともいうべき1万円程度のシューズをパッケージしている。箱根駅伝を観て、「憧れの選手と同じシューズを履きたい!」という中高生や市民ランナーの好奇心を満たすこともできるのだ。

各社、箱根駅伝を活用して自社のランニングシューズを広げていきたい考えだ(画像:ゲッティイメージズより)

 ランニングシューズはメーカーによってサイズ感が微妙に異なり、弾み方などもそれぞれクセがある。最初に履いたメーカーのシューズを気に入れば、そのまま同じメーカーのモデルを履き続けるランナーは少なくない。箱根駅伝のインパクトを使って、新規顧客を掴みたい思いがあるはずだ。

 また今回の駅伝コレクションは、すでに販売中のモデルが中心となる。異なるのはカラーリングのみだが、このようなパッケージとして発売することで、新たな広告を打てる。しかも箱根駅伝に出場する選手たちを起用することで、箱根駅伝のイメージも植え付けられるのだ。

 3社に限らず、今後は他メーカーも「駅伝パック」を展開するようになるかもしれない。

 では、そんな駅伝パックの売り上げに大きく影響を与える今年の箱根駅伝での足元争奪戦を勝ち抜くのはどのスポーツメーカーだろうか。昨年はナイキが圧倒的な差を見せつけた。2位争いはアディダスとアシックスの2社か、4位のプーマが怒涛の追い上げを見せるか。

 危ないのは5位のミズノだ。1997年から箱根駅伝の唯一の協賛にもかかわらず、前回大会の着用者は創価大・嶋津雄大選手(現・GMOインターネット)のみだった。嶋津選手が大学を卒業したことで、箱根駅伝から姿を消してしまうのだろうか。

 同社は23年3月期連結業績で売上高、営業利益、経常利益、純利益がいずれも過去最高を記録した。同年9月の中間決算でもさらなる伸びを見せているだけに、箱根駅伝の“戦い”で再び勝負をかけてくるかもしれない。

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