また近年、メーカー側は単にウェアやシューズを提供するだけでなく、選手の強化という側面でもサポートすることが増えている。ナイキは東洋大を米国本社に招待して、地元のロードレースを経験させるなど、海外レースや海外合宿を斡旋(あっせん)。アディダスも國學院大や青学大の選手を同社が主催する超ハイレベルのレースに派遣し、世界トップクラスの選手と走る機会を提供した。
プーマも23年3月に立大の選手を米国の「PUMA ELITE RUNNING Team」に招待して、貴重な経験を積ませている。
「24年の箱根駅伝出場を目指す立教大学のサポートの一環として実施しました。同大学の監督、エース級の選手たちに海外でのトレーニング、レースを経験してもらうことで、競技に対する新たな気付きやモチベーションの向上、帰国後に他選手たちへプラスの波及効果などを生むとの考えです。またプーマが中長距離に対してどれだけ本気で取り組んでいるのかや、トップ選手がどのような練習を行い、プーマの製品がどんな役割を果たしているのを現地で実際に体感してもらうことで、プーマブランド、製品への信頼性にもつながると考えました」(プーマ広報)
いずれにしても近年はチーム単体ではなく、契約しているスポーツメーカーとのタッグで選手の強化が進んでいる。スポーツメーカーは高品質のシューズを作るだけでなく、魅力的な選手を育成する時代に突入しているのだ。
また上昇ムードのチームには魅力的なオファーが舞い込んでくる。近年でいえば國學院大だろう。長年、ミズノのユニフォームを着用していたが、19年4月からはSVOLME (スボルメ)に、22年5月からはアディダスになった。
そのアディダスは昨季から大東大に、今季から東農大にもユニフォームを提供しているが、大東大は第99回大会で4年ぶり、東農大は第100回大会で10年ぶりの箱根駅伝に出場を決めている。先見の明があるといえそうだ。
なお提供メーカーが変わるとユニフォームのデザインもリニューアルすることがある。東農大はランシャツが白、パンツが緑だったが、今季からランシャツが緑、パンツが白と上下のカラーが反転した。
駿河台大は21年の予選会を突破した後にオークリーとウェアサプライヤー契約を結んだが、23年9月にはスイスのスポーツブランドであるOn(オン)とパートナーシップを締結している。
箱根駅伝の出場校は通常開催で20校。狭き門に、ホカオネオネ、アンダーアーマーなどの新たな外資系メーカーの参入があるかもしれない。
第100回大会は出雲と全日本を完勝した駒大(ナイキ)がダントツの優勝候補で、前回2位の中大もナイキを着用している。一方で、打倒・駒大を掲げる青学大と國學院大はアディダスの契約チームだ。往路では今年の出雲で3位、全日本でも5位に入るなど勢いのある城西大(プーマ)が勝負を仕掛けにくる。優勝争いをメーカーの視点で観るのも面白いだろう。
ある外資系メーカーのトップは「襷でブランドロゴが隠れないようにしてほしい」とチーム担当者に再三注意しているという。スポーツメーカーの人間にとって箱根駅伝は、別の意味でもハラハラドキドキのレースになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング