12月に支給された賞与や源泉徴収票の数字を見て、厚生年金や健康保険などいわゆる社会保険に関する控除額にため息をついた人は多いかと思われます。
こうした世相を反映してでしょうか。「年々増大する社会保険料の負担により国民の生活はますます苦しくなります。そこでお勧めなのは〇〇です」と、各種投資商品のセールストークの枕詞にもなるほどです。
そのほか「生活が苦しい」という投稿をSNSで見ることも増えましたが、生活が苦しいのは社会保険料の負担のせいなのでしょうか? 会社員の社会保険料の負担は、どの程度増加しているのでしょうか?
フリーランスや個人事業主のように社会保険に加入していない人よりも負担が大きいのかを検証するとともに、本当に社会保険が生活苦にひも付いているのかも考えてみましょう。
社会保険料とは何かについては、さまざまな解釈があります。社会保険労務士の筆者は、「会社で働く人たちが負担する健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険にかかる保険料」と認識しています。収入に応じて毎月の給与から控除されます。公務員も同様に負担していますが、失業手当の要件となる雇用保険については、会社員と比べて雇用が安定しているという理由で対象外となっています。また介護保険については、40歳以下の人は徴収されません。
フリーランス(個人事業主)には支払い義務がありません。その代わりに、国民年金料や国民健康保険料などを自ら納めています。雇用保険に該当するものはないため、仕事がなくなっても会社員のように失業手当はもらえません。
社会保険料は、この1年間でどの程度上昇したのでしょうか? 雇用保険の労働者負担は雇用調整助成金の財源確保のため、2023年の4月から、5/1000から6/1000と0.01%上昇しています。
健康保険料は企業や都道府県によって状況が異なるものの、協会けんぽに加入していて東京都に住む会社員は、9.81%から10%と0.19%上昇しています。しかし厚生年金保険料の負担率は、17年以降18.3%と変わっていません。つまり、この5年間値上がりはしていないのです。
雇用保険料率と健康保険料のアップ率は約0.2%なので、月収30万円の人の控除額は月に600円増えることになります。600円が多いか少ないかは人にもよりますが、高額とは言えないでしょう。
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