攻める総務

「紙の断捨離」わずか3年で半減の成果 エプソン子会社に聞くその秘訣(2/3 ページ)

» 2024年01月22日 07時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

個人単位で枚数を把握 PCのポップアップも

 エプソン販売の取り組みでユニークなのは、個人単位で印刷した枚数を徹底的に把握したことだ。部署ごとに使用している枚数を確認し、前年比などのデータも交えながら最適化を進めていった。

 どうしてもトップマネジメント層からのメッセージだけでは「笛吹けども踊らず」状態に陥ってしまうことがある。現場自らが使用している紙の量を把握することで、危機感や自分ゴトという認識を持って取り組めるようにした。

photo 「ムダな印刷やめたるぞっ!」──オフィス内の複合機に注意喚起を貼った

 その他、オフィス内の複合機に紙の使用に関する注意喚起のステッカーを貼ったり、業務用PCを立ち上げた際にペーパーレスに関するポップアップが出るようにしたりと、各自の意識付けを徹底。現場レベルでは月に一度レポーティングする機会を設け、経営の場でも頻繁に情報共有するなど、スローガンにとどめない工夫を凝らしていった。

photo PC画面にポップアップを表示し、周知・徹底を図った

 その結果、社内で使用した紙の枚数は19年度の1610万枚に対して、21年度は915万枚まで減少。22年度は744万枚とさらに削減し、3年で50%以上ものペーパーレスに成功した。これまで紙の資料が多かった経営会議でも事前資料を廃止。新商品の企画では、これまで承認のために10個弱のハンコを集める「スタンプラリー」状態だったというが、ワークフロー自体を変えたことで負担が軽減した。

 ペーパーレスに取り組む中で、副次的な効果も生まれた。福田氏は当時、営業部門のマネジャーとしてプロジェクトに参加。部門ごとに使用頻度が高い資料は異なるものだが、営業部門で特に多かったのが提案資料だ。

 提案資料をペーパーレスの観点で精査していて見えてきたのが、営業ごとに資料がバラバラなことだったという。それまで全社で統一したフォーマットがなかったこともあり、スキルが高いメンバーとそうでないメンバ―の間で、資料の格差があった。ペーパーレスを通して、資料作成作業やフォーマットを統一するきっかけが生まれたのだ。

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