「安い」と言い切ったマーケティングで、ピルクル ミラクルケアの販売数は順調に推移。発売1カ月でシリーズ累計出荷数は1200万本を突破した。
思い切った斬新なマーケティングが功を奏したわけだが、もちろん「安い」一辺倒では、ブランドとしての成長は望めない。「安かろう悪かろう」のイメージがつかないよう、消費者とのコミュニケーション設計はとても慎重に行った。
「安いだけにならないように、CMの冒頭で『睡眠の質、疲労感を軽減』という機能性をしっかり伝えるようにしました。その後で安さに触れています。コミュニケーション設計では、絶対に機能と安さをセットで伝えるという点を意識していました」
犬飼氏は「良いものを作ったという自信がある」と胸を張る。「きっかけは安さであっても、生活に取り込んでもらえれば良さを実感していただけると思っていました。当社のお客様相談室にも、『飲みやすかったおかげで続けられた』『睡眠の質という長年の悩みが改善された』といった感謝のメールが増えました」
睡眠市場はコロナ禍で大きく注目を浴び、急成長した。実際、睡眠の質向上やストレス緩和をうたうドリンク・食品類の市場規模は、21年に309億円(前年比191.9%)と大きく数字を伸ばしている(富士経済の調査より)
市場の追い風を受けてここまで成長してきたが、今後も右肩上がりに伸び続けるとは限らない。市場の動向をどう見ているのか。
「まず、睡眠は一時的な悩みではありません。コロナ禍で急激にニーズが高まったのは、生活様式が変わっていったことが要因だと考えています。これまでの生活様式が変わると、新しい生活に慣れるまで人々はストレスを感じます。外出制限がなくなり、開放的になり外に出ていく機会が増えることは多少なりとも疲労感をもたらします。生活様式が変化することで出てくるストレスを整えたいというニーズは生まれ続ける。コロナ禍のような睡眠ブームが落ち着いたとしても、悩みごととしてのニーズは高い状態にあると思います」
ピルクル ミラクルケアが消費者ニーズを捉え、時代の波に乗っていることは、日清食品グループ内での評価にもつながっている。決算資料の中で「非即席めん事業をけん引する存在」として日清ヨークが紹介されたのだ。
これまで「カップヌードル」「日清のどん兵衛」などの圧倒的な存在感を持つ商品が同社グループの成長を担ってきた。長年の歴史の中で、非即席めん事業にスポットライトが当たる機会は多くなかったという。2023年度第2四半期の決算報告によると、日清ヨークを含む国内非即席めん事業の売上収益は昨年同期比14.1%増の877億円、コア営業利益は昨年同期比169.0%増の80億円と2.7倍に増加した。
「グループ内で評価されることはあまりなかったので、純粋にとても嬉しいです。ピルクルブランドの価値が上がったことで、日清ヨーク社員の自信につながり、会社の空気感が変わってきていると感じます。新商品を出し、ブランドの価値が向上し、会社の雰囲気や社員が変わる、そうすることでまた新たな商品が生まれる──というポジティブな循環が出来てきている気がします」
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