「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。
「もう2023年も終わりか」「1年なんてあっという間だな」なんてお決まりの会話に少し飽きてきた師走の後半。ここ数年のコロナ禍ムードから一転し、飲食店は連日忘年会で賑(にぎ)わっているようです。
お酒を飲む人も飲まない人も、普段より少し砕けた雰囲気で今年1年の労をねぎらう忘年会。ひとしきり盛り上がった後は、二次会でカラオケを楽しむのが定番という方も多いのではないでしょうか。
長年愛され続け、世界に広がるほどのエンターテインメントの一つとなったカラオケ。そのユーザー体験や、時代とともに変化する楽しみ方を読み解くと、これほどまでに支持される理由が見えてきます。
今回はカラオケで得られる体験価値を分解しながら、そこに隠された人々を虜(とりこ)にする秘密と、時代との関わりを深堀りしてきましょう。
カラオケでできる体験を分解してみると、ただ歌うだけではないことが分かります。例えば、マイクを使って声をスピーカーで出力することで、自分や周りに大きな音となって届きます。また、高音を出そうとする時や曲が盛り上がる部分を歌う時には、お腹に力を入れて意識的に大きな声を出しています。
この「大きな声を出す」という行為は、体内に酸素を多く取り込むため、体の緊張状態をほぐしリラックス効果を与えてくれます。歌い終わった後には、歌唱力にかかわらず、大きな拍手が巻き起こります。何もすごいことはしていなくても、拍手をされると賞賛されたような気分になり、気恥ずかしくもちょっとした高揚感を覚えるのではないでしょうか。
歌って喉が渇いたらお酒で潤し、おつまみをつまめば満腹感に満たされます。自分が歌わない間にも、一緒にカラオケを楽しむメンバーの歌声や職場では見せない表情に少しドキッとしたり、自分が歌おうと思っていた曲を誰かがうまく歌っている姿に少し悔しさを感じたり──実は、カラオケで満たされる欲求を分類していくと、ヒット商品はなるべくしてなっていることが分かります。カラオケを含むヒット商品は、共通して「特定の7つの欲求」のいずれかを満たしているのです。
それは、キリスト教の教えである「七つの大罪」で示されています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング