次に、業務の運用方法における改善をどう進めていくかだ。
ある会社では、毎年全ての業務を聖域なしのゼロベースで見直し、業務の再定義を行っている。再定義とは、その業務の目的の再確認だ。
「そもそも、この業務は、何のために行っているのか?」
「そもそも、この業務を行うことで、誰が喜ぶのか?」
「そもそも、この業務を通じて、何の価値を提供しているのか?」
そのような視点で、全ての業務を見直す。惰性で行う業務をなくすことが目的だ。
ある企業では、各自の業務を順番に、他のメンバーに教える勉強の場を作っている。教え合うには、まず自身の業務を十分に理解していなければならない。あやふやなところがあれば、鋭い突っ込みが入る。業務に第三者の目が入ると、改善につながりやすくなる。
そこで、合わせて業務改善の勉強会も行う。他部署のメンバーや外部専門家を入れることで、業務が第三者の目に触れ、新たな視点や別の視点で仕事を見直す機会になる。「誰が何をやっているか分からない」ことが多い総務業務の弊害を、勉強会を通じてなくそうという試みである。
ある企業では、全ての業務を一人で完結させることをせずに、常に複数人で処理するフローとしている。誰が休んでも対応できる体制になるとともに、複数人が関わることで改善の視点を多く取り入れられる。一人が惰性で行うのではなく、常にいろいろな視点を通じて、業務を改善できるチャンスを増やしているのだ。
以上のような事例を通じて分かる業務改善のポイントは、一人に長くその仕事をさせないことである。長く担当することにより属人化が進み、誰が何をしているのかが分からない、総務部の典型的な悪いところを助長してしまう。総務の仕事改革は「見える化」がその第一歩だ。
多くの読者の皆さんも、初めての業務を行う際は、いろいろと工夫を凝らし、効率的に行うことを考え、実践していることだろう。しかし、時間の経過とともに環境が変化しているのに、従来通りの方法で業務を遂行し続け「マンネリ」に陥ることもあるだろう。
人間は変化を嫌うものであり、従来の方法が「ラクで安全」と感じるためだ。「仕事の仕方を変えることが失敗を招くのでは」という恐れもあるだろうが、怖がっていては改善やイノベーションはもたらせない。本稿の内容を参考に、踏み出してみてほしい。
株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)ワークDX推進機構 理事/ワークフロー総研 フェロー
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)ワークDX推進機構の理事、ワークフロー総研フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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