ワークショップを繰り返し実施する中で「意外だ」と松崎氏が感じたのが、社名への愛着だった。社名を恥ずかしいと考えるメンバーはおらず、むしろ社名に愛着を持っており、変える必要はないと考えていたのだ。
とはいえ、やはりロゴについては使いづらいと感じる人が多かった。「モダナイゼーションと他社との差別化を両立しなければならなかった」と松崎氏。「SaaSを提供する企業が日本語を使った社名を付けていることは少ないので、社名では差別化できていた。問題はロゴだった」と振り返る。
佐藤氏も「SaaSやサブスクサービスは同じような機能に集約されがちだが、当社のサービスは本来、不動産業務を全てカバーできるもの。細分化されたサービスを全て使っていただくことで、各サービスをデータが循環できるというのが強み」だと話す。
そうして完成したのが、6つの要素を3色に塗り分け、データが自由に行き交う様をイメージした円形のロゴだ。3つの色は、賃貸、賃貸管理、売買という要素といい生活がかけ合わされたものをイメージしたブルー、ネイビー、イエローとなっている。また、これらカラーは、コーポレートカラーとしても採用した。
ロゴを社内に披露した際、ポジティブな意見を出してくれたのは営業職だったという。佐藤氏はその理由を「社外の人との接触が多く、自社のサービスを説明する必要がある。今までのロゴでは分かりづらかったが、サービスの概要がギュッと濃縮されたロゴで、伝えやすくなったのではないか」と推察する。
「社内へお披露目したときのSlackには、会社への愛着度が高まった様子が流れていた。『入社してから最もワクワクした』『やる気が出た』などポジティブなメッセージが並んだ。会社へのエンゲージメントを高めたのではないかと考えている」(松崎氏)
実際に、エンゲージメント調査の結果にも差異が現れてきている。22年と23年の結果を比べると、「組織への愛着」項目に、偏差値スコアで0.8ポイントの増加が見られた。
「新しいロゴを発表してからというもの、“野良グッズ”が増えてきた」と松崎氏。社員が自分たちで制作した、非公式グッズのことだ。佐藤氏は「ブランドは飾り物ではない。手垢がついてこそ、本当に自分たちのものにできる。野良グッズの増加こそ、新しいブランドへの愛着の高さを示しているのだと思う」と話す。
リブランディングを実施したことで、PRだけでなくPX(People Experience、会社に関係する人の体験)の観点においても手応えを感じている。リブランディングを実現したが、それで終わりにせず、“人”と“カルチャー”を軸に発信するnoteを公式に立ち上げ、継続している。
「インタビューを受けた本人は自分の仕事を再定義できるし、同じ部署のメンバーがそれを読めばエンゲージメントは高まる。22年末から44本の記事を公開しているが、価値あることだと感じている」(松崎氏)
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