先述した弊社の調査に照らしても、未経験・即戦力問わず「コミュニケーション能力」は重視される傾向が読み取れる。
「エンジニア採用で重視している点は何か」という設問に対して、最も回答が多く集まったのは「コミュニケーション能力」(44.1%)であり、2位の「現職や前職での業務内容」よりも15ポイント近く上回っている。現状のスキルや経験よりも、コミュニケーション能力がどれだけ重要視されているかが分かるだろう。
この傾向は業態を問わないようだ。同設問の回答を業態別に見ると「受託開発」「SES・派遣」「SIer」「自社開発企業」の4業態において、いずれも「コミュニケーション能力」を最も重視していることが分かる(コンサルティング会社を除く)。
システム開発はチームで役割分担をしながら作業を行うことも多いため、メンバー同士のチームワークは欠かせない。特に関係者が多いシステム開発においては、相手の状況を踏まえて調整や業務を行う能力が必要だ。システム開発では予期せぬスケジュール変更やトラブルが発生するケースもあるため、最後まで業務を遂行できる責任感や行動力も求められる。
経済産業省によれば、2030年にIT人材は約45万人不足すると試算されている。人口減少やIT人材の退職・高齢化が進む中、日本のIT人材不足は今後さらに深刻化することが予想されるだろう。
即戦力人材の採用が困難になっている状況下で、企業は未経験エンジニアを採用し、社内で育てる方針を取り入れるなど人材確保の手段を広げていく必要があるといえる。未経験者採用には人材確保の観点以外にも、他職種・他業界からの知識共有や組織の活性化などさまざまなメリットがある。
エンジニア不足に悩む多くの企業では、優秀なエンジニアをいかに採用するかに目が向けられることが多いが、中長期的な目線で「優秀なエンジニアをいかに育てるか」に焦点を当てていくことも今後の採用活動において重要といえよう。
未経験エンジニア採用においては、現状のスキルや経験よりも将来的なポテンシャルの見極めが肝要だ。「面接内のコミュニケーションのみでは将来性の見極めが難しい」「入社後の成長の余地を適切に判断できない」という場合は、採用コンサルやエージェントといった外部リソースを活用したり、開発責任者や現場エンジニアに面接同席を依頼し、実際のコミュニケーション能力や自己研鑽への意欲を見極めてもらうということも有効な手法といえる。
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