低アルコールの「スーパードライ」が好調 3カ月で年間目標をほぼ達成した背景は?ドライクリスタルは3.5%(1/3 ページ)

» 2024年02月22日 14時24分 公開
[熊谷ショウコITmedia]

 2023年10月に2回目の酒税法改正が行われ、最終的には26年にビール、発泡酒、新ジャンルの税率が一本化されるなど、注目が集まるアルコール飲料市場。そんな中、アサヒビール(東京都墨田区)はアルコール度数3.5%以下の商品(ノンアルコールを含む)を増やしていくと発表している。販売量構成比は25年までに19年比の3倍強となる「20%」の目標に掲げ、22年は約9%、23年は約10%まで伸ばした。

 同社は「スマートドリンキング(飲み方の多様性)」を提唱。「飲む人」も「飲まない人」も互いが尊重し合える社会を目指していて、23年10月に発売したアルコール度数3.5%の「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」(以下、ドライクリスタル)もその取り組みの1つである。

 ドライクリスタルは発売から約3カ月で139万箱(※)を販売するなど、好調に売り上げを伸ばしているようだ。ヒットの要因や今後の販売戦略を同社マーケティング本部ビールマーケティング部 担当副部長の玉手健志氏に聞いた。

(※)1箱は大瓶633ml×20本で換算

「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」(提供:アサヒビール、以下同)

10年後を予想して新たなライフスタイルを提案

 記憶に残っている人も多いと思うが、アサヒビールは22年に、1987年の発売以来初となる「スーパードライ」のフルリニューアルを実施した。その後続となる取り組みとして、従来とは異なるプロセスで発売に至ったのがドライクリスタルだった。

 新商品を開発するにあたって、同社はどのような順序を踏んでいるのか。通常は市場調査から始めることが多い。しかし、本商品の場合は少し手法を変え、「10年後にビールはどのように飲まれているか、日本国内における人とビールの関係性を予想した未来」を起点に開発を進めたという。

 「かなり長い時間をかけて議論を重ねた結果、10年後にはビールの飲まれ方が今よりもカジュアルになっている未来を予想した」(玉手氏)

アサヒビール マーケティング本部ビールマーケティング部 担当副部長の玉手健志氏

 決定に至る過程では、海外のビール市場の状況も参考にしている。玉手氏によれば、日本ではアルコール度数5%台のビールが広く普及しているが、海外では特に若者を中心に同3〜4%台前半のビールが台頭し始めているという。

 アルコール度数5.0%のスーパードライと比べて、少し低めの商品を投入すればどうなるのか。あまり酔わずに楽しめる、飲んだあとにも自分の時間を過ごすことができる――。従来と比較して、よりカジュアルにビールを楽しめるライフスタイルを提案できるのではないかと考えた。

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