キャンピングカー人気は続くのか 需要維持に必要な要素とは?高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)

» 2024年03月04日 07時30分 公開
[高根英幸ITmedia]
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震災によって存在意義が高まった面も

 今年の元日に発生した能登半島地震によって、多くの被災者が自宅や家族を失い、避難所での生活を余儀なくされている。そういったところにキャンピングカーを派遣する動きもあった。これにより、非常時のキャンピングカーの有益性を伝えられたのは、今後のキャンピングカー業界にはプラスに働きそうだ。

 今後自治体は、公営のキャンプ場にバンガローだけでなく、キャンピングトレーラーやキャンピングカーを設置して、万が一の災害に備えることも増えるのではないだろうか。それができれば、断水した後に2週間も風呂に入れないという事態は避けられるはずだ。

キャンピングカーは非常時にも役立つ

 またキャンピングカーオーナーは一般の乗用車よりも高齢化が顕著であるから、今後ペダルの踏み間違いや、運転中の体調急変による交通事故なども増えていく可能性もある。したがって、キャンピングカービルダーは自動車メーカーと協力して、安全運転支援システム(レーンキープアシスト、衝突被害軽減ブレーキなど)やドライバー異常時対応システム(体調急変時の自動停車および救援要請)の導入を積極的に進めるべきだろう。

 ドアtoドアで観光地を巡ることができるという点では、キャンピングカーは高齢者にとって便利なモビリティと言うこともできる。しかし移動が楽だから体力が衰えても旅行できる、という考えは危険だ。

 クルマの運転には一定以上の運動機能や認知能力が必要なことは言うまでもない。それなのに、運転免許を取得しているだけで運転する権利があると思い込み、運転能力が低下しているにもかかわらず免許返納を拒否したり、運転能力を維持するための努力を怠ったりする高齢者があまりにも多い。

 こうしたキャンピングカーオーナーの運転能力維持に対する意識も変えていく必要がある。キャンピングカー業界は、売るだけでなく、ユーザーの高齢化に伴う配慮や意識改革を働きかけていけば、長く健康的に車中泊による旅を楽しむドライバーを確保することになるはずだ。

筆者プロフィール:高根英幸

 芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。


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