垂直統合で成功したのは? トヨタとAmazonの事例を見るビジネスモデルが分かる(4/4 ページ)

» 2024年03月11日 08時00分 公開
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垂直統合の成立条件

この一冊で全部わかる ビジネスモデル』(根来龍之、富樫佳織、足代訓史/SBクリエイティブ)

(1)資本力が必要

 垂直統合を行うには、研究開発・製造・販売を統合する際に必要な資本が自社内にあることが必要です。

(2)サプライチェーンの各工程に相応の受注規模がある

 それぞれの工程が収益規模を保つことで、企業およびグループ全体の収益も向上します。

(3)製品製造の取引工程が多いほうがコストメリットは大きい

 垂直統合によるコスト削減や取引スピード短縮などのメリットは、自動車部品や工作機械のような「多くの部品を必要とする製品」の製造においてより大きくなります。

【垂直統合の落とし穴】

 近年、技術革新による製造コストの削減や物流の進化により、自社調達よりも外部市場での調達のほうがコスト安になるケースも出てきました。その場合、工程の統合がコスト高を招くリスクが生じます。また、グループ規模が大きくなるほど、ガバナンスの統制が困難になります。

【運用のための問いかけ】

  • 自社の製品・サービスに一定以上の市場規模があるか
  • 自社の製品・サービスに持続性が見込めるか
  • 外部企業のM&Aが必要な場合、投資に見合う収益規模が見込めるか
  • 経済状況や新規制などの外的環境の変化が生じた際に、事業継続が困難になる工程をスピーディーに見極められるか

参考文献

幡鎌博「アマゾン・コムの戦略 : サービスの垂直統合と顧客中心主義」『IT News Letter』8(1), pp.3-4(2012年)

デイビッド・ベサンコ、マーク・シャンリー、デイビッド・ドラノブ『戦略の経済学』(ダイヤモンド社、2002年)


この記事は、『この一冊で全部わかる ビジネスモデル』(根来龍之、富樫佳織、足代訓史/SBクリエイティブ)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。


プロフィール:

根来龍之(ねごろ・たつゆき)

早稲田大学ビジネススクール教授

京都大学文学部卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。鉄鋼メーカー、文教大学などを経て2001年から現職。早稲田大学IT戦略研究所所長。早稲田大学大学院経営管理研究科長、経営情報学会会長、米カリフォルニア大学客員研究員などを歴任。著書に『集中講義 デジタル戦略』『プラットフォームの教科書』『ビジネス思考実験』『事業創造のロジック』(いずれも日経BP)、『代替品の戦略』(東洋経済新報社)、『IoT時代の競争分析フレームワーク』(編著、中央経済社)などがある。ネット系企業の顧問や既存企業のデジタル対応などの企業研修で実務と関わるとともに経営情報学会論文賞を3回受賞するなど理論構築も行う。

富樫佳織(とがし・かおり)

愛知淑徳大学准教授

学習院大学法学部卒業。早稲田大学商学研究科修了(MBA)。NHK(日本放送協会)ディレクター、放送作家、WOWOWでのプロデューサーを経て2017年から現職。

放送番組の受賞歴に、高柳財団第41回科学放送高柳賞企画賞、第2回衛星放送協会オリジナル番組アワード中継番組部門最優秀番組、WOWOWで放送された『Blueman Group Connect to Japan』で第40回国際エミー賞アート番組部門ファイナリストなど。著書に『やわらかロジカルな話し方』。ビジネスモデル、マーケティング戦略、メディア企業のデジタル戦略を研究分野としている。プラットフォーム企業のアドバイザー等も務める。

足代訓史(あじろ・さとし)

拓殖大学商学部准教授

早稲田大学商学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得満期退学。株式会社日本総合研究所研究員、早稲田大学商学学術院助教、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)アジア研究所客員准教授などを経て、2019年から現職。早稲田大学IT戦略研究所招聘研究員。専門は、競争戦略とイノベーション、アントレプレナーシップ。主な著書(分担執筆)に『1からのアントレプレナーシップ』(碩学舎)、『モバイルバリューの社会システム』(経済産業調査会)などがある。日本ベンチャー学会清成忠男賞(論文部門(奨励賞))受賞。大手企業・スタートアップにおける経営アドバイザーや社内研修講師もつとめる。


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