HR Design +

大手新卒17年。自分のスキルは通用するのか?――ベンチャー企業に3カ月「留学」して得たもの(1/3 ページ)

» 2024年03月15日 07時00分 公開
[秋山未里ITmedia]

 定年まで1社で勤め上げるのが美徳とされた時代は終わり、転職が“当たり前の選択肢”になりつつある。その結果、転職未経験者の中には「自社での経験は、他社では通用しないのでは」「果たして自分にスキルはついているのか」と不安や焦りを感じる人も少なくない。

 大日本印刷(以下、DNP)に勤める渡邉厚太さんもその一人だった。

渡邉厚太さん(大日本印刷 Lifeデザイン事業部 ビジネスクリエイションセンター サービス開発本部)

 「大企業の中にいると、ある程度『道』ができています。先輩たちが作ってくれた道を私が後ろから追っているだけで、本当に自分に実力があるのかどうか分からない。大手企業との仕事ができるのも、自社の看板があるからではないのか? ポンと外に出た時に、仕事がついてくるのか? これまでやってきたことはよそで通じるのか? という思いがありました」

 そんな思いを抱えていた渡邉さんは、DNPが導入した「複業留学」のプログラムに参加した。

 複業留学とは、自分が普段取り組んでいる仕事を続けながら、ベンチャー企業のプロジェクトに3カ月間、週1日程度参加するというもの。人材開発支援サービスを手掛けるエンファクトリー(東京都千代田区)が提供するプログラムだ。

 この取り組みで、渡邉さんは沖縄県うるま市で藻に関する開発や商品販売を行うフードテック企業のAlgaleX(アルガレックス)の事業に参加した。

 2006年に新卒でDNPに入社し、17年目にして初めて他社で働く経験をした渡邉さん。3カ月間の複業留学を経て、何を得たのか。

どこまで通用するのか、試してみたい

 複業留学先のAlgaleXで渡邉さんは、マーケティングを担当した。具体的には、藻を活用した商品のBtoB領域での販路拡大がミッションだった。

 遠方のため、一度あいさつで沖縄県を訪れた後はオンラインで業務に参加。週1回、定例の会議に参加するほかは勤務時間が指定されるわけではなく、自分で調整しながら週の5分の1ほどの時間を複業留学に充てるスタイルだ。

 渡邉さんはこれまでの業務でマーケターと関わることが多く、そのスキルを生かせるのではないかと考えてこのポジションを選んだという。

 新卒時には包装事業部にディレクターとして配属され、即席麺や菓子などのパッケージデザインのディレクションを担当した。パッケージに意味を持たせて付加価値を高めることを目的に、消費財メーカーのマーケターにさまざまな提案をした。

 次第に仕事の領域は広がり、単純にプロダクトのデザインを決めるだけでなく「(マーケティング上の)課題がどこにあるのか分からない」といった顧客のサポートをする機会が増えていった。

 多くの案件に関わり、企業ごとに異なる悩みを聞く中で、消費者が求めるものを探っていくマーケティング思考が身についた。

 「必要に応じて本を読んだり研修を受けたりしましたが、学校でマーケティングを学んだことはないですし、分かりやすい資格もありません。これまでのスキルがどこまで通用するのか、試してみたいと思いました」

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.