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生成AIが経営分析をサポート 名古屋鉄道の利用法は? 1000時間超の業務削減も生成AI 動き始めた企業たち(2/3 ページ)

» 2024年03月18日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

Q. 自社のAI技術の強みは何か

 当社では、21〜23年度を対象とした名鉄グループ中期経営計画において「DXの推進」を掲げ、AIをはじめさまざまな手法でグループ全体のDX化に取り組んでいます。

 生成AIに関しては、23年7月にSaaS型のChatGPTツール「exaBase 生成AI」を導入し、24年2月末時点でグループ約400人に展開しています。SaaS型を選択した理由としては、プロンプトが学習されない高セキュリティの生成AI環境をスピーディに導入可能だったこと、ログや利用状況、業務削減効果が可視化され定量的な効果が策定できること、頻繁に機能アップデートが行われ常に最新レベルの生成AIが利用できることなどが挙げられます。

 利用開始から半年以上が経過しましたが、業種・部門・役職問わず活用効果を挙げており、ユースケースは「経営分析補助」「プログラミング」「多言語一斉翻訳」など多岐にわたります。業務削減効果は本年2月末時点で1000時間超を達成し、さらなる業務効率化や質の向上に期待しています。

 また、生成AIに限らずAI全般の活用にも取り組んでおり、カメラのAI画像解析による踏切事故の未然防止を進めています。従前ではセンサーにより、踏切内の人や車の停滞を検知していましたが、これをAI画像解析により実現するもので、23年11月から実運用を開始しています。

名古屋鉄道は23年11月からカメラのAI画像解析による踏切事故の未然防止の取り組みを進めている

 センサーは踏切内だけを検知していますが、カメラは踏切の隣接道路も映しているため、踏切周辺の状況をAIが画像解析することでさまざまな事故防止へのアプローチが期待できると考えています。

 22年12月には、踏切前方道路の混雑をAIが検知し、踏切侵入前の自動車にETCなどを活用して車内に音声で注意喚起する仕組みを実証実験しました。今後もAIの特徴を生かすことで、踏切の安全性が大きく向上すると期待しています。

Q. 自社の競争優位性をどう確保するか

 当社は鉄道業界の中では比較的早期に生成AIの活用を開始しました。これまでの検証で得られた知見をもとに、引き続き当社だけでなく、グループ全体へ生成AI活用拡大を進めます。

 生成AIの高度活用のため、社内データと連携可能な生成AI環境を構築する必要がありますし、その先には個人の職種や役割に応じて回答してくれるパーソナライズ型生成AIが求められると考えています。

 現状では管理部門での業務利用が大半ですが、(駅員や車掌などの)鉄道現業部門や、お客さま向けサービスでも生成AI活用を検討し、顧客サービス向上と業務効率化の両面を実現したいと考えています。

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