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生成AIを「利用しない」リスクとは 村田製作所が全社導入した理由生成AI 動き始めた企業たち(1/2 ページ)

» 2023年09月20日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

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【概要】ChatGPTが登場直後から注目を集め、業務利用や自社サービスへの応用など活用が広がっている。ChatGPTはビジネスをどこまで変えるのか――AI研究の第一人者・松尾豊氏と、ChatGPT活用術の発信で話題の深津貴之氏が語る。

連載:生成AI 動き始めた企業たち

 生成AIがビジネスを大きく変えようとしている。従来のルールを覆す「ゲームチェンジャー」となり得る新技術に、企業はどう向き合うのか。生成AIの独自開発・活用に名乗りを上げた企業に構想を聞く。

これまでの掲載

日本IBMサイバーエージェント日立製作所富士通NEC

パナソニック コネクトNTTデータ情報通信研究機構(NICT)三菱電機

今後の掲載予定

  • 村田製作所(本記事)

※順不同、今後も追加予定

 連載「生成AI 動き始めた企業たち」第10回は、電子部品大手の村田製作所を取り上げる。同社は2月から一部の部署で先行的に生成AIを導入。7月から範囲を拡大し、国内の全従業員3万人を対象に、生産性向上を目的に業務導入を始めた。

 スマートフォンやPCで使われる電子部品の生産・開発は世界でもトップクラスのシェアを誇る同社。長年、DXにも注力し、AI開発にも力を入れる。同社の強みはどこにあるのか――。回答者は同社情報システム統括部デジタル推進部部長の内海克也氏。

ビジネスへの影響 自社の強み 競争優位性 リスクと対処法 ルール整備
日本IBM 新ビジネスの創出と業務プロセスの大変化が起こる 顧客の競争優位につながるユースケースに特化したAI 最先端技術をIBMのオープンプラットフォームに取り込む 情報漏えいなどを防ぐためにはガバナンス強化が必要 顧客向けAIプロジェクトでは社内AI倫理委員会で審査
サイバーエージェント 従来のサービスの性能自体の向上につながる 独自LLMを用いChatGPTのような対話型AIの開発が可能 競争よりも協力して日本独自の生成AIの発展を期待 データ活用のための法整備を国全体で進める必要がある 生成AIの業務利用についてガイドラインを策定
日立製作所 設備保守などを学習させ熟練者の技術伝承も可能になる 毎年100件超のAIを活用したプロジェクトを推進 運用や保守に関する情報を学習した日立独自のLLMを開発 情報漏えいを防ぐため「出力内容の吟味」が必要 利用の判断基準を定めた業務利用ガイドラインを社内展開
富士通 ホワイトカラーの仕事への影響が大きい 人の振る舞いや表情を認識するAIなどに強み 顧客業務に特化した生成AI開発と安心利用できる環境整備 社会的リスクにAI倫理影響評価ツールなどの手法を提案 従業員にeラーニングの受講を義務付けている
NEC 生成AIは「次なる産業革命」の「道具」になる AI・自然言語分野の豊富な支援実績から培った知見に強み 生成AIの利活用をフルスタックでサポートできる 情報の出入力の制御が重要 秘密情報の取り扱いなどに着目し社内ルールを制定
パナソニック コネクト 資料作成・企画立案など非定型業務でも活用可能 画像認識、生体データ分析・ロボティクスなどに強み 早く広く生成AI活用を社内で促進 著作権などのコンプライアンスの課題と不適切な利用リスク 生成AI利用に関する注意事項5項目を制定
NTTデータ 新しいビジネスの登場も考えられる 言語の生成AIでの技術的なノウハウに強み 既存の強みを生かし、他社との差別化と強みを作っていく リスクを詳細化し対処法を網羅する必要がある 外部サービスの選定と生成指示について注意喚起した
情報通信研究機構(NICT) 人材不足など日本社会の重要課題で生成AI活用が進むと期待 大量の高品質な日本語学習データを蓄積済み これまでの研究知見を民間企業に提供し日本の産業の底上げを狙う 生成AIの副作用の抑制に柔軟に対応できる体制、技術の整備が重要 規定の手続きに則り研究者らが申請を行って承認を得て研究開発や利活用
三菱電機 専門知識がなくてもAIと対話しながら機器を操作できるようになる さまざまな分野の現場データや機器の知見を生かしたAI技術を保有 コンパクトな言語モデルで生成AIを活用する際の実用性と安全性を高める 機密漏えい、権利侵害、輸出管理違反、虚偽情報などを対処 自社の生成AI利用環境やガイドラインを整備済み
村田製作所 ルーティン業務の自動化でアウトプットに集中できる データの活用におけるAI利用に強み 過去からのAI活用に関するノウハウ蓄積が競争力に 「守り」「攻め」の2つのリスクを見る必要がある 利用規則で制限を設けている
各社の回答(要約)

Q. 生成AIはビジネスと社会にどんな変化をもたらすか

 これまで人手と時間をかける必要のあったルーティン業務の効率が向上することで、人はより頭を使う専門的な業務に集中できるようになると考えています。報告資料やメール、プログラムコーディングの初案作成、論文・特許などからの情報抽出といった業務は、生成AIにより一気に自動化される可能性があります。その結果、得られた情報を日常業務におけるアウトプットへつなげることに集中できるようになります。

 また網羅性が格段に向上することにより、新たなアイデアの創出にもつながると考えています。加えて、アイデア創出からアウトプット・検証に至るPDCAサイクルを高速に回すことができるので、よりスピーディーに精度の高いビジネス提案が可能になります。

村田製作所は生成AIを業務にどう活用しようと考えているのか(同社提供、以下同)

Q. 自社のAI技術の強みは何か

 データの活用におけるAI利用が強みです。当社の主力事業の一つであるセンサとのシナジーを生かし、センサで収集したさまざまなデータをAIによって分析し、付加価値の創出につなげています。

 また見据えている顧客は、通信・モビリティ・環境・ウェルネス市場のお客さまです。当社はこの4市場を大きな事業機会と捉えており、それぞれにおいて村田製作所ならではのイノベーションを創出し、社会課題の解決を目指していきます。

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