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生成AIが互いに議論? 国立法人NICTが目指す「フェイクを見破る術」とは生成AI 動き始めた企業たち(1/4 ページ)

» 2023年09月06日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

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「ChatGPT」が変える“ビジネスの未来”

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【概要】ChatGPTが登場直後から注目を集め、業務利用や自社サービスへの応用など活用が広がっている。ChatGPTはビジネスをどこまで変えるのか――AI研究の第一人者・松尾豊氏と、ChatGPT活用術の発信で話題の深津貴之氏が語る。

連載:生成AI 動き始めた企業たち

 生成AIがビジネスを大きく変えようとしている。従来のルールを覆す「ゲームチェンジャー」となり得る新技術に、企業はどう向き合うのか。生成AIの独自開発・活用に名乗りを上げた企業に構想を聞く。

これまでの掲載

日本IBMサイバーエージェント日立製作所富士通NEC

パナソニック コネクトNTTデータ

今後の掲載予定

  • 情報通信研究機構(NICT、本記事)
  • 三菱電機
  • 村田製作所

※順不同、今後も追加予定

 連載「生成AI 動き始めた企業たち」第8回は、日本語に特化した独自の対話型生成AIの試作モデルを開発し、7月に発表した国立研究開発法人「情報通信研究機構」(NICT)を紹介する。

 ICTを専門とする唯一の公的研究機関として、さまざまなAIシステムを開発し、ノウハウを蓄積してきた。これまでの知見を民間企業などに提供し、日本の生成AI関連産業の底上げを目指すというNICT。今後、どのような生成AI技術の研究・開発が必要だと考えているのか。回答者は、NICTデータ駆動知能システム研究センターの鳥澤健太郎氏。

ビジネスへの影響 自社の強み 競争優位性 リスクと対処法 ルール整備
日本IBM 新ビジネスの創出と業務プロセスの大変化が起こる 顧客の競争優位につながるユースケースに特化したAI 最先端技術をIBMのオープンプラットフォームに取り込む 情報漏えいなどを防ぐためにはガバナンス強化が必要 顧客向けAIプロジェクトでは社内AI倫理委員会で審査
サイバーエージェント 従来のサービスの性能自体の向上につながる 独自LLMを用いChatGPTのような対話型AIの開発が可能 競争よりも協力して日本独自の生成AIの発展を期待 データ活用のための法整備を国全体で進める必要がある 生成AIの業務利用についてガイドラインを策定
日立製作所 設備保守などを学習させ熟練者の技術伝承も可能になる 毎年100件超のAIを活用したプロジェクトを推進 運用や保守に関する情報を学習した日立独自のLLMを開発 情報漏えいを防ぐため「出力内容の吟味」が必要 利用の判断基準を定めた業務利用ガイドラインを社内展開
富士通 ホワイトカラーの仕事への影響が大きい 人の振る舞いや表情を認識するAIなどに強み 顧客業務に特化した生成AI開発と安心利用できる環境整備 社会的リスクにAI倫理影響評価ツールなどの手法を提案 従業員にeラーニングの受講を義務付けている
NEC 生成AIは「次なる産業革命」の「道具」になる AI・自然言語分野の豊富な支援実績から培った知見に強み 生成AIの利活用をフルスタックでサポートできる 情報の出入力の制御が重要 秘密情報の取り扱いなどに着目し社内ルールを制定
パナソニック コネクト 資料作成・企画立案など非定型業務でも活用可能 画像認識、生体データ分析・ロボティクスなどに強み 早く広く生成AI活用を社内で促進 著作権などのコンプライアンスの課題と不適切な利用リスク 生成AI利用に関する注意事項5項目を制定
NTTデータ 新しいビジネスの登場も考えられる 言語の生成AIでの技術的なノウハウに強み 既存の強みを生かし、他社との差別化と強みを作っていく リスクを詳細化し対処法を網羅する必要がある 外部サービスの選定と生成指示について注意喚起した
情報通信研究機構(NICT) 人材不足など日本社会の重要課題で生成AI活用が進むと期待 大量の高品質な日本語学習データを蓄積済み これまでの研究知見を民間企業に提供し日本の産業の底上げを狙う 生成AIの副作用の抑制に柔軟に対応できる体制、技術の整備が重要 規定の手続きに則り研究者らが申請を行って承認を得て研究開発や利活用
各社の回答(要約)

Q. 生成AIはビジネスと社会にどんな変化をもたらすか

 ビジネスにとどまらず、さまざまな領域で新規性のあるアイデアの創出や実践がより盛んになると考えます。手近なところでは、資料作成などの事務作業は早くなるでしょう。

 また、応用領域といった視点では、偽情報など、さまざまなリスクは解決する必要がありますが、高齢者介護における人材不足、教育、人材育成など、日本社会の重要課題での生成AIの活用が進むと期待しています。

NICTは日本の生成AI関連産業の底上げを目指す(NICT提供、以下同)

 以下は懸念点です。

 事務作業の迅速化に見合っただけの情報の消化と、意思決定の迅速化が実現されなければ、生成AIが作った資料の山ができるだけになる可能性もあります。恐らくほとんどの日本人が日本の組織は意思決定が遅いという認識だと思いますが、その点の改善が今後、重要になるのではないでしょうか。場合によっては、組織構造の改編も必要かもしれません。

 確率が最大となる文字列やデータを生成する(つまり、ある意味で「ありふれた文字列やデータ」を生成する)生成AIが、本当の意味で尖(とが)ったアイデアが出せるかという点は、より真摯(しんし)な検討が必要です。そこに特化した新規性のある生成AI技術の研究開発が必要だと考えています。 

 皆が同じ生成AIを使うのであれば、やはり皆同じようなアイデアに落ち着いてしまう可能性もあり、アイデアの新規性の担保は、今以上に厳しくなる可能性もあると考えます。これらの意味で生成AIの研究開発や活用法の研究は、今以上に重要になるかもしれません。

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