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長文の技術資料を“数十秒”で確認可能に アサヒビールの生成AI活用法生成AI 動き始めた企業たち(1/2 ページ)

» 2023年10月16日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

連載:生成AI 動き始めた企業たち

 生成AIがビジネスを大きく変えようとしている。従来のルールを覆す「ゲームチェンジャー」となり得る新技術に、企業はどう向き合うのか。生成AIの独自開発・活用に名乗りを上げた企業に構想を聞く。

これまでの掲載

日本IBMサイバーエージェント日立製作所富士通NECパナソニック コネクト

NTTデータ情報通信研究機構(NICT)三菱電機村田製作所JR西日本

今後の掲載予定

  • アサヒビール(本記事)
  • 九州電力
  • 住友生命保険

※順不同、今後も追加予定

 連載「生成AI 動き始めた企業たち」第12回は、アサヒビールを取り上げる。同社は9月から、生成AIを用いた社内情報検索システムの試験導入を始めた。

 社内には、ビールの醸造技術や容器に関するさまざまな技術情報が点在する。これらを集約・整理し、効率的に取得できるようにすることで、商品開発の強化につなげる考えだ。

 システムは単に情報を集約するのではなく、文量の長い技術資料を、生成AIを用いて100字程度の読みやすい形に要約して提示。これで担当者は資料確認が大幅に時短できるという。

 商品開発の強化にとどまらず、社員の業務効率化も目指すという同社。生成AIのどのような活用を構想しているのか。回答者はイノベーション戦略部部長の浜田晃太郎氏と同部副課長の木添博仁氏。

ビジネスへの影響 自社の強み 競争優位性 リスクと対処法 ルール整備
パナソニック コネクト 資料作成・企画立案など非定型業務でも活用可能 画像認識、生体データ分析・ロボティクスなどに強み 早く広く生成AI活用を社内で促進 著作権などのコンプライアンスの課題と不適切な利用リスク 生成AI利用に関する注意事項5項目を制定
NTTデータ 新しいビジネスの登場も考えられる 言語の生成AIでの技術的なノウハウに強み 既存の強みを生かし、他社との差別化と強みを作っていく リスクを詳細化し対処法を網羅する必要がある 外部サービスの選定と生成指示について注意喚起した
情報通信研究機構(NICT) 人材不足など日本社会の重要課題で生成AI活用が進むと期待 大量の高品質な日本語学習データを蓄積済み これまでの研究知見を民間企業に提供し日本の産業の底上げを狙う 生成AIの副作用の抑制に柔軟に対応できる体制、技術の整備が重要 規定の手続きに則り研究者らが申請を行って承認を得て研究開発や利活用
三菱電機 専門知識がなくてもAIと対話しながら機器を操作できるようになる さまざまな分野の現場データや機器の知見を生かしたAI技術を保有 コンパクトな言語モデルで生成AIを活用する際の実用性と安全性を高める 機密漏えい、権利侵害、輸出管理違反、虚偽情報などを対処 自社の生成AI利用環境やガイドラインを整備済み
村田製作所 ルーティン業務の自動化でアウトプットに集中できる データの活用におけるAI利用に強み 過去からのAI活用に関するノウハウ蓄積が競争力に 「守り」「攻め」の2つのリスクを見る必要がある 利用規則で制限を設けている
JR西日本 さらなる生産性向上に期待 通話要約の業務で18〜54%の効率化を実現 人と生成AI両輪で事業を展開 個人データを機械学習に利用しないことが必須 ルールブックを作成し対応者全員に研修
アサヒビール 人がより創造的な活動に従事できる 文量の多い技術資料を要約できる 早期の試行で生成AIの適応範囲を理解 政府や業界の動向に注視が必要 グループ会社で注意点などを共有
各社の回答(要約)

Q. 生成AIはビジネスと社会にどんな変化をもたらすか

 生成AIが人の業務を補助することで、業務が効率化され、人がより創造的な活動に従事でき、会社の業績に貢献できると考えています。

 今回の検索システムでは要約というタスクを生成AIに与えていますが、今後はR&D(研究開発)部門でのアイディエーションやデータ解析などのさまざまな業務に対して生成AIが補助し、担当者は生成AIの結果を基に消費者のための価値創造に数倍時間をかけることができるようになります。結果として消費者の生活と会社の業績に貢献できるようになると考えています。

(同社提供、以下同)

Q. 自社のAI技術の強みは何か

 今回の検索システムでは、検索者が探している情報を資料が持っているかを読んで判断する時間を短縮するため、生成AIを用いて要約を作成しています。特に技術資料の場合、数ページにわたる資料も多いため一資料あたり確認するのに数分かかっていたところ、要約を見れば数十秒で判断できます。

 AI技術について、検索者が知りたい技術的な要素を含めて要約を出力させるために、ChatGPTへのプロンプトを当社独自に作成しました。要約を作成する場合、人が行うと数時間かかることもあり、要約の作成を業務とすることは現実的ではありませんが、生成AIを用いることで簡単に実施することができます。また、自社に合わせたプロンプト作成の知見が得られたと考えています。

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