「足のサイズが左右で違う」人はそこそこいるのに、なぜ“シュー店”はなかったのか火曜日に「へえ」な話(3/5 ページ)

» 2024年03月19日 07時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

最大の課題は「在庫」

 理由の2つめは、もうからないから(または、もうからないと思い込んでいたから)。「それを言っちゃあおしまいよ」と映画『男はつらいよ』のワンシーンを思い浮かべた人もいるかもしれないが(古い)、先ほど紹介したように、左右で0.5センチ違う人は5%ほど。日本の人口でいえば、ざっと600万人もいる。ターゲット層が「ウチもほしい」「オレもオレも」となってくれれば、新しい市場が生まれることになる。

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 ただ、会社の同僚に「オレの足って、左右のサイズが違っていて。ちょっと右足だけ痛いんだよね」といった話をしても、理解してくれる人は少ない。運よく5%の人に出会えて「オレもオレも。足が痛くてつらいよねえ」といった話をしても、それ以上の話は広がらない。なぜなら、片足だけの靴を購入できないから。

 消費者側からは「別々に買えないから」という声があって、店側からは「買う人が少ないから」という声があって――。「卵が先かニワトリが先か」といった話になってしまうが、いずれにせよこれまで新しい市場は生まれず、“靴難民”は漂流したままである。

サービスのデモ画面

 そうした人たちに向けてDIFF.は事業をスタートさせたわけだが、最大の課題は「在庫」だ。同社はメーカーから商品を仕入れているので、倉庫にたくさんの靴が並んでいる。しかし、あるモデルの左24センチ、右25センチがよく売れてしまうと、右24センチ、左25センチがあふれてしまうことになる。こうした問題は解決できるのだろうか。

 清水さんに聞いたところ「各サイズの在庫について、凸凹をなくすにはどうすればいいのか。計算したところ、1モデルにつき30足ほど売れれば『平坦になる』と考えています。1足のシューズを売るのに、理想は1足に近づけていくこと。1〜2足の間に収まれば、ビジネスはうまく回っていくかなと思います」とコメントした。

 理想の数字に近づけるために、同社は取り扱っている商品を絞りに絞っている。人気のない商品を扱うと、在庫をかかえるリスクが高まるので、いわゆる“売れ筋”しか販売していない。いまのところランニングとサッカーのシューズしか扱っていないので、ECサイトを見ると「あれ、これだけ?」と思う人もいるだろうが、少ないのには意味があったのだ。

 今後の話をちょっとだけ紹介する。販売目標は、24年9月までに「月間400足」を掲げている。売り上げが伸びていけば、野球・バスケット・ラグビーといった具合にカテゴリーを増やしていくという。少しずつ少しずつ積み上げていく「ビジネスモデル」を視野に入れているようだ。

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