#SHIFT × Tech

20万台を突破した「ミライスピーカー」が米国に “無名の商品”をどうやって売るのかテレビの音が聞こえやすくなる(2/5 ページ)

» 2024年03月26日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]

国内市場は、2つの新製品で展開

 ミライスピーカーの核となるのは、「曲面サウンド」と呼ばれるサウンドファンの特許技術だ。振動板が円すい形である一般的なスピーカーに対し、ミライスピーカーの振動板は平板を湾曲させた形状となる。これがテレビの音、特に人の声を聞きやすくするのに効果を発揮するという。

湾曲した振動板がテレビの音を聞きやすくする。同社の調査では87%が「音量を上げずにテレビの音が聞こえやすくなった」と回答した(サウンドファン提供)

 同社は、創業以降しばらくB2Bで事業を展開していたが、20年5月に初の家庭用製品として「ミライスピーカー・ホーム」(メーカー希望小売価格2万9700円、以下:ホーム)を発売。聴力が衰えた高齢者をメインターゲットにし、販売数を伸ばしてきた。

「ミライスピーカー・ホーム」の機能性は維持しつつ、デザインをスタイリッシュにして、価格を下げた後継機が写真の「ミライスピーカー・ミニ」となる(サウンドファン提供)

 23年10月には、曲面サウンドのユニットを左右に1つずつ搭載することでステレオサウンドを実現した「ミライスピーカー・ステレオ」(以下:ステレオ)を、24年2月にはシリーズ最安値の「ミライスピーカー・ミニ」(以下:ミニ)をそれぞれ発売。ミニはホームの後継機であり、音を聞こえやすくする機能性はそのままに、2万円以下の価格を実現した。

 これらの新製品は、顧客の声から生まれている。初代のホームは人の声は聞きやすいが、ドラマや映画のBGMなど背景音の聞こえ方に物足りなさを感じる人がいた。そういった音を楽しみたいニーズに応え、声が聞こえやすく、かつステレオサウンドで音の臨場感を引き出すモデルとして「ステレオ」を開発したという。

ステレオの開発には、約3年の歳月がかかったそうだ(サウンドファン提供)

 さらに、価格の引き下げを望む声を受け、部品点数を減らしたり、工場を変えたりして、機能性を維持したまま価格を引き下げた「ミニ」も開発。ホームは高齢の両親へのプレゼントとして購入されることが多く、「3万円は高い」という意見が一定数あったという。

以前は白だった振動板を黒にしたことで、デザイン性をアップした(筆者撮影)

 新製品の発売に合わせて、これまで白だった振動板を「黒」に変更した。既存の黒い振動板では思ったような音質にならず、ホームで使っていた白い振動板を黒い塗料で塗ることにしたが、その調整はかなり難航したとか。「技術担当者に強く依頼して、黒い振動板を実現してもらった」(金子氏)そうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.