こうした効果もあり、SBI証券の投信積立設定額は急増する。23年末には1067億円まで増加し、1547億円の楽天証券を急速に追い上げてきた。楽天に代わり、クレカ積立といえばSBI証券×三井住友カード――そんな雰囲気さえあった。
ところが、金融庁が進めた規制緩和がそのバランスを崩してしまったのだ。これまでクレカ積立は月間5万円が上限という実質的な規制があった。ところがこの額では年間120万円の新NISAつみたて投資枠を埋められない。そのため規制が緩和され、3月から月間10万円までクレカ積立が可能になった。
一見、ユーザーにとっても証券会社にとっても10万円への上限拡大はいい話だ。ところがポイント還元については各社難しい選択を迫られることになった。還元率を変えなければ、付与するポイントが2倍になってしまうからだ。
各ネット証券とカード会社が取った新たな還元策はざっくり以下のとおりだ。
勝手な感想をいえば、還元率を低くしていた楽天証券は増額にもそのまま対応できた。auカブコム証券は1%の還元率を維持し、要するに10万円積み立てれば還元ポイントが倍になるという攻めた施策を取った。マネックス証券は5万円まで1.1%という高還元を維持しつつ、段階的に還元率を下げることで、10万円積立時は0.73%となるようにした。各社それぞれ方向性は違うが、苦心したあとが見られる。
ここで最も難しい対応を迫られたのがSBI証券と三井住友カードだ。プラチナプリファードの5%還元を10万円までそのまま適用したら、還元ポイントは6万ポイントにも達してしまう。年会費3万3000円を大きく上回る額だ。さてどうするか? と思っていたところ、取ってきたのは高額カード利用者優遇策だった。
具体的には、ベースの還元率を1%に大きく下げた上で、年間カード利用額が300万円以上なら+1%、500万円以上なら+2%するというもの。500万円以上カードを利用する人なら3%還元になるので、年間で3万6000ポイントが還元される。これまでは3万ポイントだったので、ここだけ見れば改善だ。ただカードで500万円の買い物をする人がどれだけいるだろう。
要するに、そもそも年会費3万3000円もするハイエンドカードだったプラチナプリファードだが、クレカ積立5%施策の結果、カードショッピングをあまり利用しない層も保有するようになった。これがよかったのか悪かったのかは分からないが、三井住友カードとしては方針を転換し、カードをたくさん使う人のためのカードに位置付け直したということだ。
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