物流2024年問題で叫ばれる「多重下請撤廃」 それでも“水屋”がなくならないワケスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2024年04月03日 05時30分 公開
[窪田順生ITmedia]

もはや「日本文化」ともいえる「多重下請構造の闇」

 当時、三井不動産のマンションを支える杭打ち工事で「2次下請け」だった旭化成建材が不正を行っていたことが発覚。その後、調査を進めると全国の杭打ち266件でデータ偽装をしていたことが判明した。

次々と明らかになった「杭打ち不正」(画像はイメージ)

 ただ、それよりも驚くのは、この不正に関わった50人以上の「現場責任者」が旭化成建材の社員ではないということだ。工期中だけ出向した下請け、孫請けの人々が「現場代理人」を名乗って作業の指示をしていたのである。

 この「多重下請構造の闇」については当時、多くの議論が行われ、筆者も15年に公開した記事「なぜ建設業界は責任とリスクを“下”に押しつけるのか」の中で問題提起もさせていただいた。

 いずれにせよ、鹿島が半世紀以上も放置していた「多重下請構造」の撤廃に乗り出したのは、「尻に火が付いた」からだ。末端の作業員の賃上げや待遇改善を目指して自発的に着手したわけではなく、自社のビジネスにいろんな不利益が出てきたので追い詰められる形で重い腰を上げただけにすぎない。

 こういう建設業界の事例を学べば、運送業界の多重下請の弊害がそう簡単に是正できるわけがないのは明らかだろう。

 「じゃあやっぱり欧米のように法律などでしっかり禁止して、建設企業が職人を直傭(ちょくよう:事業者が直接雇用をすること)するしかないのでは」と思う人もいるだろうが、それはかなり難しい。

 なぜかというと、「多重下請構造」はもはや「日本文化」と言っていいほど、日本社会に根ざしているものだからだ。

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