組織において、個人が不安や恐れを感じずに自身の考えを表現できる状態を指す「心理的安全性」。前回の記事「企業風土は『会議』に表れる 本音を話せるミーティングをつくるためのルール」では、心理的安全性を高めるための職場ミーティングの運営方法について紹介しました。
今回は、心理的安全性を確保するために重要な、相手の「ひととなり」を知る方法に焦点を当ててみたいと思います。
職場では誰しも「仮面」をかぶり、素の自分を隠して仕事をしています。もちろん、それが普通であり、悪いことではありません。しかし、もしそんな仮面を少し外して、お互いのひととなりをより深く知り合えたら、相互理解と信頼感の醸成につながるかもしれません。では、どのようにして、ひととなりを知り合えばいいのでしょうか。
株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー。
クラシック音楽の作曲家として長年活動してきたユニークなバックボーンを持つ。
自身の芸術創造の経験をビジネスに応用し、一人一人が“らしさ”を解放し、また多様な個性が織りなす、ゆらぎや葛藤を新価値創造の源泉として生かしていくような、ダイナミックな社会と組織をつくる支援をライフワークとしている。
前職では、大手小売業の人事部門で教育体系の構築や採用戦略策定、人事制度策定に携わり、自ら変革当事者として積極的に取り組んだ経験を持つ。
スコラ・コンサルトに加わってからは、人事課題をはじめ、ミッション・ビジョン・バリュ−策定、戦略ビジョンなど、経営課題の全般にわたる知識体系を生かし、本質的な経営課題をあぶりだすアプローチを得意とする。「人間とは何か」という問いに昔から心引かれており、心理学や仏教をはじめ、哲学、東洋思想にも造詣が深い。
共著に『わたしからはじまる心理的安全性』(翔泳社)。
心理的安全性のベースとして最も大切なことの一つが「互いのことをよく知っている」こと。つまり、相互理解が重要です。ここでいう相互理解とは、学歴や職歴、得意なスキルなどの表面的な属性だけではなく、その人の価値観や考え方、性格などのより深い部分に対して、互いによく理解し合うことです。
知らない人と話すときに、相手がどんな人か分からないと、つい相手を警戒してしまいがちです。しかし、相手のことを理解できたと実感した瞬間に、警戒心が解けて、親近感が一気に高まるような経験をしたことはないでしょうか。このように心理的安全性のベースとして、相互理解はとても重要なのです。
誰かと話している途中で、実は出身地や趣味などに共通点があることが分かり、急に相手に対する親近感が増すような経験をしたことがある方も多いでしょう。相手と自分の共通点をたくさん見つけて、親近感を高めることは確かに効果的です。しかし、本当に心理的安全性が高いチームをつくるためには、相手と自分の「違い」をよく理解することを通して、相手に対する親近感を高めていくことが必要です。
誰しも自分と違う個性を持った他者に対しては、少し警戒してしまうものです。「なんであの人は、こんなことを言うのだろう」「自分だったら、絶対にこんなことしないのに」「こんなことをするなんて、あの人は間違っている」など、分からないからこそ、不安になったり、怒りの感情がこみあげてくることもあります。
しかし、相手は相手で、自分自身の価値観や考え方、性格などにもとづいて行動しているのです。相手を知ることで、相手がなぜそういう行動をするのかが理解できるようになります。さらには、相手の自分と異なったところを「強み」として認識できると、チームのために積極的にその強みを発揮してもらおうという関わり方をすることができます。
よく、お互いの異なる部分を否定し合ってしまうことがあります。これは、相互理解という面でもマイナスですし、チームとしても相手の強みを生かせないため、とてももったいないことですね。
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