リテール大革命

なぜ、アマゾンは「薬局ビジネス」に注力するのか? 競合の“破壊者”となる生成AIの実力石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(2/3 ページ)

» 2024年04月10日 12時45分 公開
[石角友愛ITmedia]

オンライン上で全て完結? アマゾンファーマシーの実力

 アマゾンファーマシーを利用することで、ユーザーはWebサイトや専用アプリから処方薬を注文し、自宅に配送してもらうことが可能です。また、支払いには医療保険も適用できます。従来の方法では、病院で処方箋を発行してもらい、別の場所にある薬局で薬を受け取る必要がありました。このプロセスには時間と手間がかかっていました。

 それに対し、アマゾンファーマシーはこの一連のプロセスをオンライン上で完結できるため、非常に便利なサービスとなっています。さらに、Amazonプライム会員向けにクーポンや無料配送サービスも用意し、既存ユーザーの囲い込みを図っています。こうした取り組みにより、1年間で利用者数を倍増させることができました。

 このようなビジネスモデルから、アマゾンファーマシーは従来の大手薬局チェーンであるウォルマートやコンビニエンスストアにとってのディスラプター(破壊者)になるのではないかと注目されてきました。

 さらに、Amazonはこのサービスを進化させ、ニューヨーク市とロサンゼルスの広域圏で処方薬の即日配達を開始したことを3月26日のブログで発表しました。目的の一つとして、慢性疾患などを持つ患者が継続的に必要な服薬を行わないことで生じるさまざまな問題の解決が挙げられます。

処方箋をめぐる問題が

 米国疾病予防管理センター(CDC)の報告によると、慢性疾患の処方箋のうち、20〜30%が薬局で受け取られていません。受け取られた処方箋でも、約半数が指示通りに服用されていないということです。

 このような状況により、年間約12万5千人もの死亡者が出ている計算になります。さらに米国の健康システムには最大3000億ドルものコストが発生しているとされています。つまり、処方薬の不服用が健康面で多大な被害を出しているばかりでなく、経済的にも甚大な影響を及ぼしていることが分かります。

 こうした問題を解決するために、アマゾンファーマシーは顧客に必要な薬がすぐに届く当日配送サービスを開始しました。最短で数時間で薬が届くというスピーディーな当日配送サービスを可能にするために、生成AIと機械学習が用いられているということで、さらに注目を集めています。

 では、具体的にどのような場面で生成AIや機械学習が活用されているのか見てみましょう。

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