セールスフォース・ジャパンが提唱する「THE MODEL」は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスという新しい営業活動の分業モデルを提唱し、多くの営業組織に影響を与えている。
SFAを活用した営業プロセスの設計は画期的であり、多くの会社がこれに倣って自社の営業組織を組み替えた。一方で、ブームに乗ってむやみにTHE MODELを導入した企業が陥る“落とし穴”もある。前回の記事では、企業がTHE MODEL導入に失敗する要因を分析した。
<むやみな「THE MODEL」導入の落とし穴 失敗企業に共通する“犯人”とは>
実は、THE MODELの内容は2000年代前半、Salesforceの市場開発時に行われたオペレーションが基となっており、情報が少し古くなっている。
今回はTHE MODELを発展させる形で新しい時代のセールスプロセスを考察し、営業におけるデータ活用、営業マネジメントのDXについて紹介していきたい。
THE MODELでは「パイプラインマネジメント」(営業の一連の業務プロセスを管理すること)の手法が紹介された。
まず、顧客との取引ステージをSFA上に入力。課題認識のフェーズなのか、最終交渉のフェーズなのかと案件ごとに記録していく。そしてそのフェーズに合わせて、「今このフェーズであれば次はこうしていこう」「このフェーズに滞在している日数が多すぎないか? こんな対応をするべきでは?」とマネジメントするのだ。
しかし、このパイプラインマネジメントには挫折ポイントがいくつかある。
(1)そもそも営業担当がフェーズをちゃんと更新しない
(2)フェーズを更新したところで、営業担当は何をアクションすればいいか分からない
(3)上司もフェーズごとにどうするべきか指導できない
(4)仮にフェーズごとに「こうしなさい」と上司が指導しても、営業担当がそのアクションをしているか分からない
このようにそもそも更新活動が面倒くさい、そして実際にアクションに起こすのが面倒くさい……。だから挫折してしまう、という構造が潜んでいる。
米国最新のセールスオペレーションでは、「セールスエンゲージメントツール」を導入し、シーケンス管理(※)をすることが一般的だ。海外ではOutreach、日本ではMagic Moment PlaybookやUPWARD、BALES CLOUDといったツールが該当する。
※シーケンス:営業のタスクを順序を決めて型化、整理すること
これらのツールは、前提としてSFAとツール間連携を行う。そのうえで、SFAに登録されているフェーズや、直近のカレンダーに登録されたスケジュールから、自動的にこんなアクションをしてくださいねと営業タスクを「発火」する。
また、ツールによって営業タスクを自動化する機能もついている。例えば商談したその翌日に「テンプレートA」のフォーマットに沿ってお礼メールを送る。3日後には「資料B」をメール送付し、メール未開封の場合はIP電話で電話をするというタスクが発火する。次の商談が設定できたらその顧客のステージは「C」に変更される――というイメージだ。
このように、手動で対応していたSFAの更新作業と実際のアクションが、セールスエンゲージメントツールによって自動化、自動記帳されていく。SFAの営業アクションをアップデートするという意味では、まるで「SFA2.0」であると言ってもいいだろう。
これらのツールが誕生したのは2010年代の中盤〜後半であるため、THE MODELの内容が取り組まれているときには登場していない概念である。
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