THE MODELはSMB(中小中堅企業)のインバウンドリード(問い合わせや資料ダウンロードをした人を対象)を中心とする営業の考え方であるため、大手企業のアウトバウンド営業(まだ接点がない人を対象)については記載がなかった。
しかし、昨今のセールステクノロジーはこのアウトバウンド営業にも焦点が当てられている。接点がない大手企業への営業アプローチ手法と製品が進化しているのだ。
それらは古くからの営業スタイルでは「ターゲットリストの作成ツール」と表現されていたが、今風の表現では「セールスインテリジェンスツール」「インテントデータツール」と呼ばれている。海外ではZoomInfoやLinkedIn、日本ではSansan、FORCAS、Sales Markerといった製品が有している機能だ。
THE MODELは何らかの問い合わせ、イベント参加、資料ダウンロードをしている企業の担当者を「リード」として管理し、そのリードへの架電やメールで商談のアポイントを取る手法を紹介している。
しかし、大手企業の重役者は業務の掌握範囲が広く、いちいちベンダーのコンテンツフォームに入力していないことがある。ただし、取引金額を上げる大型商談を作ろうと思うと、大手企業へのアプローチは必須になる。また、大手企業であればどこでもいいわけではなく、自社との親和性やつながりのある会社に対して営業活動をしたほうが生産性は高い。
そこで、自社では連絡先を保有していない企業情報のリストを購入し、そのリストから工夫してアポイントを取得するという考えに至る。セールステックベンダーが取り扱っているのは単なるリストではなく「デジタルリスト」だ。
日本人からすればLinkedInが直感的で分かりやすい。会社名、部署、名前、つながりの情報をLinkedInは有しており、営業として狙いたい会社に合わせてメッセージが送れる。組織規模と所在地を絞って営業連絡など、絞り込みもできる。実はLinkedInは海外では有償で顧客のリストを手に入れられるセールスツールなのである。
日本では、Sansanが狙いたい企業に対して自社で名刺を保有している人がいないか探せる機能を提供している。ユーザベースが提供するマーケティングプラットフォーム「FORCAS」は、自社の受注企業リストを読み込ませれば、その会社に近い企業のリストを自動で作成できる機能があり、日本の大手企業においても導入が進み出している。
また最近注目されているのは「インテントデータ」であり、特定のワードを検索している企業や、特定のサイトにアクセスしている企業など、購買意図のある行動をしている企業を発見し、その企業に対してアプローチができる製品が人気を博している。海外ではZoomInfo、日本ではSales Markerが人気だ。
これらのツールは「セールスインテリジェンス」とも呼ばれているが、インテリジェンスとは「知性」「知識」という意味がある。単なる知識ではなく「情報収集した結果から優良な判断や意思決定を行うための知識」という意味合いがあるようだ。
つまり、「セールスインテリジェンスのツールを正しく使う」という言葉には、まだ会っていない顧客に対して有効となるアプローチができるように顧客情報を活用する――そんなニュアンスが含まれる。
もちろん、データの活用は、JR東日本が提供するIC乗車券「Suica」のパーソナルデータ販売における炎上などのニュースもあり、繊細で倫理観ある営業コミュニケーションが求められる。顧客の迷惑にならないよう、情報収集による事前準備や、連絡内容の考慮が必要だ。
こちらの内容は、THE MODELが書かれた際は日本市場でのアプローチとして用いられていなかったため、記載がない。しかし、営業活動の効率化において採用される機会は増えていくだろう。導入をする場合は、自社で業務フローやルール設計をしなければならない。
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