現状は日本の味を再現して現地で反響を得ているが、長く定着させるには「ローカライズが必要だ」と田中氏は言う。
「もともと視察の段階では、ローカライズが重要だろうと考えていました。現地の人にも、ファミリー向けのメニューなど商品ラインアップを広げたほうがいいと言われましたし。ただ、闇雲に広げるのではなく、ブランドにフィットする形で変化していく必要があり、ここが最も難しいと考えています」
田中氏は、カナダやマレーシアなど日本の飲食店が多く出店しているエリアで、ローカライズに失敗している事例を多く見てきたという。
「現地では、『メニューを増やせば売れる』というのが一般論です。ですが、例えば『天丼専門店』でありながら、現地のニーズに合わせて中華料理の麻婆豆腐丼を売り始めたとしたら、商品の幅は広がってもストーリーはつながりません。当社でいえば、『わらびもち専門店』でありながら、日本食という広いカテゴリーでラーメンも売り出すなど。こういった度が過ぎたローカライズは、定番人気の獲得につながらないと思います」
目先のローカライズとしては、甘みや食感の微調整に着目しているという。例えば、シンガポールでは小売店や自動販売機で購入できる甘味飲料、及び飲食店やホテルで提供される甘味飲料に含まれる糖分量をA・B・C・Dにランク付けし、表示を義務付けている。国民の健康意識が総じて高く、糖分多めや氷入りの冷えた飲み物を避ける傾向もある。
こういった背景から、現地の人が好む甘さや味の濃度、食感などが日本とは異なるかもしれないと考えているそうだ。
初の海外出店で勢いよくスタートダッシュを切った甘味処鎌倉。年内に新たな国への進出も予定しているといい、今後の動向も気になるところだ。
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