供給作業の品質次第で、生産効率は向上も低下もする。もし定義通りの作業ができれば、一般的に生産工程で見られる次のようなムダが解消される(図2)。
これらのムダが解消されるだけでも、生産効率は大幅に改善される。部品などを取る時の判断間違いによる品質不良も削減できる。もちろん、現時点で定義通りの供給作業を実施していなかった場合、その通りに実行することで一時的に物流作業工数が増えるかもしれない。
しかしそれを補って余りある効果が生産工程で生み出されるのである。まさに「損して得取れ」だ。これらのムダ解消による生産性向上と品質向上が最初の宝である。
そしてもう一つの宝を紹介しよう。その宝は、一般的に次のような生産を行っている工場から見つかる傾向がある。
これらが当てはまる工場は、在庫が減らない、生産効率が向上しないといった課題があると考えられる。生産ペースが現場に委ねられていると、自由度が高く一見効率的に見えるかもしれない。しかし実態はそうでもない場合が多い。
実際に問題となっているのが「つくりすぎのムダ」を発生させてしまっていることだ。この問題は、生産のコントロールがきちんとできていないことによって生じる。生産工程が自律的に行動できること自体は悪いことではないが、一定の規律も必要である。それを供給作業で補っていこうということが、定義の趣旨でもあるのだ。
供給作業者は生産開始ギリギリ前に生産に必要なものを必要な数量だけ届けるため、生産工程はそのタイミングでその数量分だけしか生産できないことになる。部品などを届けると同時に、供給作業者は生産指示も届けるので、生産工程はその指示に従う必要があるのだ。
さらに供給作業者が届ける完成品用容器は生産指示数量が入る数だけなので、仮に何かしらの形で必要以上の生産を行ったとしても入れる容器が無いということになる。これで「つくりすぎ」は制限され、工場内在庫の削減につながるのである。
軍事用語に「ロジスティクス」という言葉がある。日本語では「兵站(へいたん)」と訳され、戦争の際に前線に必要な物資を供給することを指す。この出来栄えが、戦争の勝ち負けに大きな影響を与えることはいうまでもない。
かつての日本軍は、この兵站が脆弱だったために太平洋戦争に敗北したとしばしばいわれている。工場も同様だ。いかに生産工程という前線に物資を効果的に届け、工場効率化によって他社との戦いに勝ち抜くかということである。それだけに今回のテーマである供給作業の重要性を改めてご理解いただければ幸いである。
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