分かりやすいのが先ほど紹介した、デリバリー配達員とのトラブルだ。実はあの配達員が待ちぼうけをしていたのは、一部の客や配達員がかねて指摘していた「早消し」という不正があったのではないかといわれている。
日本マクドナルドの本部では、店舗で速やかに商品を客に渡しているのかをチェックするため、「商品提供までのスピードに一定の目標値」を定めている。
本部は尻を叩けばいいだけだが、叩かれる方はたまったものではない。目標値を下回れば店舗の評価は下がるので、マネージャーの人事評価にも響く。そこで現場の知恵として編み出されたのが「早消し」だ。実際に商品を手渡したわけではないのに早々に商品の番号をモニター上で消して、取りに来たことにしてしまうのだ。
そう聞くと、「目標値をクリアするためのちょっとしたズル」という印象だが、やっていることの本質はさまざまな企業で発覚している「データ改ざん」と変わらない。自分たちの組織内でのポジションを守るため、目の前のノルマや数値目標をクリアすることで頭の中がいっぱいの状態だ。その不正によって「客」がどんな不利益を受けるのか、どこかにスコーンと飛んでいってしまう。これは客や配達員にデメリットしかない「早消し」にも当てはまる。
一般論だが、こういう「自己保身型の不正」がまん延し始めた企業は赤信号だ。現場で働く人たちがノルマや業務効率化を達成することでアップアップで、「サービス品質」にこだわったり、「客」を思いやったりという心の余裕がなくなるからだ。
そんな風にギリギリのところに追い詰められた「感情労働者」の目の前に、無礼な口の聞き方をする客や、マナーの悪い迷惑客があらわれたらどうなるか。抑え込んでいた怒りや不満が一気に爆発をして「表に出ろ!」「帰れ!」なんて暴言も飛び出すはずだ。
そして、このような「客への反撃」はマックの店舗で今後さらに増えていく、と筆者は見ている。
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