日本マクドナルドホールディングス(HD)の2023年12月期連結決算は、フランチャイズ店を含む全店売り上げ高と本業のもうけを示す営業利益、最終利益がいずれも過去最高だった。商品の値上げやテークアウト、宅配が堅調で、既存店の客単価は前年比8.5%も増えた。
値上げをしても利益が上がったということは、店舗が高度なオペレーションで業務効率化を達成している証でもある。この路線をさらに突き進むには、現場はさらに厳しい数値目標を強いられるということだ。
誤解なきように言っておくが、数値目標が悪いと言っているのではない。現場で働いている人たちは血の通った人間なので、「あれもやれ」「これもやれ」といわれても全ては手が回らない。現場に効率を突き詰めさせるのは結構だが、そこに加えて「どんなに苦しくてもいつも笑顔を」みたいな感情労働を強いていたら、「ブチギレ店員」のような情緒不安定な人がもっと増えていくのではないか、と心配しているのだ。
生産性や効率の向上を本気で目指すのならば、現場にそれに集中させるだけの環境を整えるのが企業の役目だ。マックのサービスを支える店員のメンタルを守るため、日本マクドナルドはこんな思い切った宣言をしたらどうか。
「従業員も血の通った人間なので笑いたくない時もありますので、これからは“スマイル0円”は廃止します」
会社がここまで言ってくれたら、現場の人々は「感情労働」の負担が減る。「どんな時も笑わなくてはいけない」という強迫観念が消えるので、仕事が楽しければ自然と笑みがこぼれる。
カスハラ問題が深刻になっていることからも分かるように、日本人の多くはいまだに「お客さまは神さま」と思い込んでいる。ネットやSNSで「態度が悪い」「愛想が悪い」と店員をボロカスに叩く人が後を絶たないのがその証左だ。
日本の消費者の思い上がった「特権意識」を変えていくためにも、「スマイル0円廃止」というマックの英断に期待したい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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