リサーチ事業を行う矢野経済研究所(東京都中野区)は、国内の中古車流通市場を調査した。2023年の中古車小売台数を約260万1000台と推計し、2022年の251万と比較し、前年比でわずかだが増加したことが分かった。
2023年は、半導体などの各種部品サプライチェーンの混乱が解消に向かい、新車生産・販売環境が大きく改善し、新車への買い替え時に発生する下取車両も増加した。それによりオートオークションの平均成約価格も低下し、国内消費者が中古車を購入しやすい環境へと回復したと、矢野経済研究所は分析する。
同社の国内自動車ユーザーアンケート調査から分かった、2023年の平均中古車購入総額は162万8000円で、同年の金額ベースの国内中古車小売市場規模(平均購入総額×小売台数)は約4兆2342億6000万円と試算する。
新車市場と共に回復を見せている中古車市場だが、2023年には大手中古車専業における不祥事があり、中古車業界全体のイメージダウンにつながった。業界全体のイメージ改善に向けては事業者一丸での取り組みが期待される。
さらに、2023年はインボイス制度の導入、中古車販売時における支払総額表示の義務化などが開始され、中古車事業者の仕入れや販売環境が変わった。支払総額表示の義務化に関し、本調査に関連して実施した中古車販売店アンケート調査から「プライスボードの更新に手間がかかる」といったマイナス面の声や、「消費者にとって分かりやすくなった」というプラスの意見など、さまざまな反応が聞かれた。
国内新車販売の主流は所有車両の代替需要だが、近年は代替スパンが長期化傾向にあるという。今後は脱炭素化やモビリティ(移動手段・方法)の多様化に向け、販売車両の機能の高度化や電動化が進み、短期的には新車価格の上昇が続くとの予想がある。
これに対し矢野経済研究所は「新車よりも価格が比較的安価である中古車の需要は拡大していく可能性が高く、しばらくは追い風を受け続けるだろう」とコメントしている。
今回の調査は、主要領域別に中古車小売販売、中古車買取、オートオークション(入札会含む)、中古車輸出の動向、参入企業動向を分析した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング