資生堂の美容部員がインフルエンサー化 華やかな投稿に隠れたSNS戦略とは(3/4 ページ)

» 2024年05月26日 08時00分 公開
[菊地央里子ITmedia]

社員がインフルエンサー化する強み

 資生堂はこれまでも、インフルエンサーを起用した企画を行ってきた。社外のインフルエンサーではなく、社員であるオムニPBPが発信することのメリットとは何だろうか。「一番は資生堂というブランドに対する熱量が桁違いであることです。PBPとして培った、商品や美容に対する豊富な知識量も武器の1つだと思います」(河原氏)

sib オムニPBPの強みとは?(あーちゃんのInstagramより引用)

 あーちゃんは「等身大であること」が大きなポイントだと指摘する。「雲の上の存在ではなく、自分たちの身近な存在であると感じてもらえていることが強みだと思います。また、私たちは店舗での接客経験があり、日々多くのお客さまの悩みを聞いてきました。この経験から多くの人の悩みを解決する、かゆいところに手が届くような投稿内容も差別化要因ではないでしょうか」

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sib 「等身大」な投稿が魅力の1つ(あーちゃんのInstagramムより引用)

 投稿内容はオムニPBPの裁量に任せる部分が多い一方で、投稿前のチェック体制は厳重だ。実際に投稿を始めてみて難しいと実感したのが、薬機法に関わる表現だという。

【訂正:2024年5月27日14時10分 初出で「薬事法」と表記しておりましたが、誤っておりました。「薬機法」に訂正しお詫びいたします。】

sib 投稿前のチェック体制は厳重(あーちゃんのInstagramより引用)

 薬機法とは医薬品や化粧品などの有効性・安全性などを確保するため、一定の基準や取り扱いを定めた法律のこと。「店頭であれば、口頭で詳しく説明したり実際に手に取って見せたりすることができます。ですが、投稿では文章や動画のみで、どんな小さな誤解も生まないような伝え方をしなくてはならないのです」(あーちゃん)。そのため、オムニPBPは定期的に勉強会を実施し、薬機法の知識をアップデート。勉強会で得た知識と日々の投稿から得た経験値を組み合わせながら、より分かりやすい伝え方を模索しているという。

 投稿の頻度やスケジュールもオムニPBP自身が管理している。投稿頻度とフォロワー数は比例するので、月に10投稿は心掛けているそうだ。スケジュールを組む際にもコツがあるのだとか。前述の通り、薬機法に関するチェックには時間がかかる。そのため、スキンケアについての投稿は完成するまで2週間くらい時間がかかることも。「一方で、メーク方法などの動画は比較的短期間のチェックで済みます。こうした投稿内容ごとの事情に合わせて、撮影日時や投稿日を調整しています」(あーちゃん)

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sib 計算された投稿スケジュール(あーちゃんのInstagramより引用)

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