新時代セールスの教科書

令和の今、「根性論」を再定義する 営業パーソンに求められる“バランス感覚”とは?(2/3 ページ)

» 2024年05月31日 08時30分 公開
[磯江怜ITmedia]

根性論が有効な3つの理由

 筆者が根性論が有効だと考える背景には、3つの理由があります。

(1)顧客との強い信頼関係を築くきっかけに

 機械的な対応ではなく、人間らしさを感じられる営業スタイルは、顧客との長期的な信頼関係の構築につながります。顧客は、自分に熱意をもって真剣に向き合ってくれる営業パーソンに心を開きやすい傾向があります。営業パーソンの熱心さが、問題解決への本気度が顧客の心を動かし、強い絆を生むのです。

 例えば、ある営業パーソンは、顧客の抱える課題に真剣に耳を傾け、解決策を提案し続けました。SFAやCRMなどのツールを活用し、継続的に、かつストーリー性をもって提案。すぐには成果が出なかったものの、諦めずに顧客と向き合い続けた結果、強い信頼関係を築くことができました。

 多くの営業パーソンはなかなかこれが出来ません。すぐに結果のみを求めるからです。この継続性とストーリー性のある提案こそが、現代における根性論の発揮だといえるでしょう。

(2)逆境を乗り越える原動力になる

 営業の世界では、必ず壁にぶつかる時が来ます。厳しい交渉、ライバル企業との競争、目標未達というプレッシャー……。そんな逆境の中で、営業パーソンを支えるのが根性です。「顧客のために、仲間のために」という強い思いが、困難を乗り越える力を与えてくれます。顧客や仲間の役に立ちたい、助けになりたいという一心が、営業パーソンをさらに高みへと押し上げるのです。

 実際、私自身も営業の苦しい局面で、根性に助けられたことがあります。ある大口顧客との交渉が難航し、心が折れそうになったとき、「この顧客の役に立ちたい」「仲間の努力に報いたい」という一心で頑張り続けることができました。この時、下手に出て顧客の言いなりとなり、引き下がることもできましたが、顧客のことを思いあえて厳しい指摘もしていました。根性が原動力となり、最後には顧客の信頼を勝ち取り、大型の取引契約につなげることができたのです。

(3)自己成長の源泉となる

 根性を持って営業に取り組むことは、営業パーソンの成長にもつながります。常に高いモチベーションを保ち、 失敗を恐れずチャレンジする姿勢は、自己の可能性を押し広げてくれるでしょう。営業パーソン自身の成長なくして、顧客の期待に応えることはできません。顧客のためにと、自らの限界に挑み続ける。そうした根性が、営業パーソンを確実に成長させているのです。

 営業における根性とは、自己成長の種をまく行為なのです。昔と違い、営業支援ツールは世にあふれており、SNSもあります。これらを適切に学び、活用することで顧客のためになる行動や提案はいくらでもできます。そして、そのような努力を重ねれば重ねるほど、営業パーソンとして大きく成長できるチャンスに恵まれ、ひいては自分のための行動となるのです。

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