リテール大革命

小売業が「値引き」以外で売れる体制を作るには? 現地調査をして分かったこと(2/3 ページ)

» 2024年05月31日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

「キャンペーン価格」でも割高なコンビニ

 次に特定保健用食品(トクホ)の飲料で、新商品を比較してみましょう。

 グラフは、東京と大阪のドラッグストア2店舗、東京の大型スーパーとミニスーパー、さらに大阪のホームセンターとコンビニ2店舗を比較したものです。

 コンビニは新商品ということもあり、期間限定キャンペーンで特別価格を展開していました。しかし、キャンペーン中の価格であっても全体の中で最も高い金額となっています。最安値の東京・銀座のドラッグストアでは、コンビニのほぼ半額となる75円でした。

 都心部(東京都中央区)のミニスーパーで、健康関連飲料の新商品を取り扱っていないのも意外な結果です。新商品の発売時でも、これだけ価格や品ぞろえに差が生じています。どの商品で価格勝負をし、どの商品では価値訴求を徹底するのか、この判断は各社の戦略や店舗の立地、競合性などで大きく分かれるところなのです。

 デジタル技術を使い、いかに競合の価格把握ができたとしても、一概に「競合を下回れば良い」という単純な判断はできず、人の考察とデジタルの融合が必須になるのではないでしょうか。

エリア別の差異はどのようになっている?

 エリア別差異も見てみましょう。今回調査した大阪と東京のコンビニでは、エリア別で特に価格差はありませんでした。競合関係にあるコンビニ2社間の価格も、調査した商品においては価格差はありません。

 ドラッグストアは、価格差こそなかったものの品ぞろえに差異がありました。スーパーマーケットは品ぞろえも価格も差があり、店舗ごとに設定を変えていることが見てとれます。

 東京の店舗の方が若干価格を高く設定していることが分かりますが、これは大阪の店舗は周辺に競合店が多い半面、東京の店舗はコンビニ以外の競合店が少ないことが起因します。東京の店舗はタワーマンションの1階にあることからも、低価格より健康志向などの価値訴求が適する立地であるとも予想されます。

 また、今回調査したスーパーマーケットは東京と大阪で8.8%の価格差がありました。東京と大阪の所得差は7.7%という厚生労働省の調査結果もあることから、このスーパーにおいては(あくまで今回調査した4商品についてですが)エリアの所得差に近い価格設定になっているといえるでしょう。

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